■「拳を上げて反対」よりポジティブな発信に

 今回の5度目の焼失で、僕が勝手に想像してしまうのは、やはり大きな時代の変わり目なのではないかということです。だからこそ諦めずにまた復元してほしいし、その方法も新しい時代を象徴するものになっていくだろうと思います。以前とは違い、クラウドファンディングがあり、世界遺産になり外国からの旅行者が増えたことで沖縄を好きな人が海外にも広がっています。沖縄だけではなく、県外や海外に住む人、沖縄を好きな人たちが枠を超えて一つになる。そういう復元になることを願っています。

 さらに、単に「文化財への寄付」ではなく、沖縄のユニークさをうまく伝えながら再建につなげることができるといいなと思いますね。世界が「◯◯ファースト」と自己中心になってきている中で、万国津梁の鐘のようにいろんなものを受け入れる考え方が沖縄にはあり、自然を愛し、見えないものを受け入れて手を合わせるという特異な場所があることは、日本の財産であり、世界の財産でもあると思うのです。

 僕は沖縄で自然を守るためのコンサートやシンポジウムをしたときも、ポジティブな発信にこだわってきました。拳を上げて反対すると溝が広がるだけだから、愛される沖縄を発信できていたらそれで良いと考えました。今回の火災でも、原因についていろんな憶測が流れました。SNSでみなさんの目に止まるのは、どうしても刺激的な言葉や人を非難する言葉になっています。原因究明はきちんとされるべきですが、犯人探しに時間を費やすのは本当にもったいないですよね。その波に乗りたくないし、感動することを増やしたいと僕は思います。首里城が誰かに攻撃されたわけではないのだから、あくまでもアクシデントと受け止めて、手を取り合って進んでいこうと沖縄の人たちには伝えたいですね。「本土の人にはわからない」と拒絶しないで、枠を超えていこう。

 伊勢神宮に式年遷宮があります。20年ごとに社殿を創り替えることで、宮大工の方たちの技術継承にもなるでしょうし、信仰を受け継いでいく力になるのだと思う。首里城も焼失したからすべてがゼロになったというわけではありません。沖縄独特の漆が燃えやすかったのなら、伝統を守りながら耐火性を高めるなど、新しく発展させていってほしい。そういうところから、新しい伝統は生まれると思うんです。

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沖縄を離れた理由とは?