それでは、どうしたら投票率が上がるのか。過去の事例からいうと、投票率が上がるのは、二大陣営対立になったときです。2005年の郵政選挙や、2009年の政権交代選挙のように、争点のはっきりした二大陣営の選挙になると関心が上がり、棄権が減る。

 それに対して、投票率がガクンと落ちるのは、新党ブームのときです。1990年代半ばと2010年代がそうでした。数え方にもよりますが、1993年から2000年には33の新政党、2012年以降で25の新政党ができました。そんなに離合集散を繰り返したら、ふつうの有権者はとても覚えきれない。当然、投票率は下がります。

 毎日ニュースやネットを調べているような人は別ですが、たいてい次々と新政党ができると投票率は下がる。そもそも、3年後にあるのかどうかわからない政党には投票したくない人も多い。こういう状況で投票するとすれば、昔からあって10年後もあるだろう政党、つまり自民党になりやすいでしょう。

■弱まる社会的ネットワーク

 さて、結論です。ここ30年の変化というのは、「地元型」が減って「残余型」が増えた。しかし、「大企業型」はあまり変化がない、というのが私の見立てではあります。

 政党は、町内会や労働組合に組織されている人を重視しがちです。そうなると、「残余型」は社会保障制度だけでなく、政治からも漏れ落ちる。そうでなくとも制度の隙間にあたる存在ですから、困っている人が多いであろうと推測できます。

 しかし、少なくとも2000年代までは、そうした変化に気付くことに遅れました。それは、「大企業型」が日本社会の典型だという固定観念を、社会全体に投影して語ってしまっていたからといえます。こうした認識を、変えていくことが必要でしょう。

 また投票率が下がっているのは、政治に対する無関心だけでなく、地域的なネットワークや労働組合など社会的なネットワークの弱体化が原因になっていると思います。たしかにSNSは発達しているけれど、フェイス・トゥ・フェイスのネットワーク、職場や地域のネットワークが弱っている。面と向かって話さずに、ネットだけで言い合っていたら、分極化が起きるのはどこの世界でも同じです。

 これまで日本は、農林水産業や商業などの自営業が、先進国のなかでもとても多い国でした。そのため、「地元型」の地域ネットワークによりかかって、社会保障の充実や、政党政治の活性化をさぼってきたという側面があります。地域や家庭で互助していれば福祉は少なくて済むとか、地域関係で得票すれば政策を語らなくていいとか、そういうかたちでやりすごしてきた。企業福祉に頼るとか、労働組合の選挙動員に頼るとかも、同様だったといえます。

 これからは、それではやっていけません。社会そのものの足腰が弱っている。これからは、その現状を把握したうえで、対策を考えていかなければなりません。なかなか簡単に答えが出るものではありませんが、今日の話がご参考になれば幸いです。どうもありがとうございました。

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