佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
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(写真はイメージです/GettyImages)
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 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は「携帯電話」について。

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 告白しよう。ガラケーだ。ガラケーユーザーだ。絶滅危惧種、いや危惧どころか、ほぼほぼ滅びつつある、ガラケーユーザーだ。「ほぼほぼ滅び」って言いづらいね。そんなことはいい。ま、僕がガラケーユーザーということは、ご存知の方もいるだろう。以前、とある地方で女子高生から声を掛けられた際、「二朗さんに似てる人だなあと思ったんですけど、確信が持てなくて……でもガラケーを持ってるから、あ、二朗さんだ!ってなりました」と言われたことがある。「ああ、そうでしたか」と力ない敬語で返したと記憶している。

 ちょっと前までは、「ガラケーなんですね!」と驚かれた。「!」が付いた。最近では「!」は付かない。「ガラケーなんですね……」。絶句である。驚きを通り越し、掛けるべき言葉を失うのだろう。あるいは「ガラケーなんですね(泣)」。憐れみと蔑みの入り交じった慈悲深い目で見られる。俺が泣きたくなる。中には「ガラケーなんですね(半笑)」や、「ガラケーなんですね(怒)」なんて反応もある。いかん、ホントに泣きたくなってきた。

 以前、僕が一番年上の現場で、みんなで写真を撮ろうということになり、皆のスマホは、「♪ぴろぴろり~ん」的な可愛らしいシャッター音なのに、僕のガラケーだけ、「カシャ」という、なんというか、それはもう「カシャ」としか言いようのない、地を這うようなクラシカルサウンドが鳴り響き、いま強引に片仮名にしてみたが、要するにその場が一瞬凍りつき、どうしようもなくアナログ臭が蔓延し、若い俳優たちが半ば必死、半ばヤケ気味に、「お、お、おしゃれ~、その音、おしゃれ~」「う、うん。逆に? 逆に、おしゃれだよね~」と、死にもの狂いのフォローをしてくれたことを、今も1週間に2度ほど思い出し、枕を涙で濡らしている。

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佐藤二朗

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佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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百発百中で驚愕される「ガラケーでツイッター!?」