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今年の紅葉は、台風による倒木や塩害などの影響を受け、例年のように鮮やかな色付きが期待できないスポットも出ているとか。関東は特に塩害の被害が大きく、枯れてしまった木々もあるようで、自然の力の大きさを改めて思い知る。
●紅葉も美しい仏教の母山・延暦寺
紅葉シーズンといえば京都の寺社が特に人気を集めるが、滋賀県との県境に位置する比叡山・延暦寺も忘れてはいけない紅葉スポットだ。府内に比べて色づきがやや早いため、一足早く紅葉狩りが楽しめる穴場ともいえる。筆者も11月30日までとなった「伝教大師1200年大遠忌記念 至宝展」を見に、色づき始めた木々が美しい延暦寺まででかけてきた。今回は、日本仏教の母山とも呼ばれる比叡山について紹介してみようと思う。
●延暦寺が輩出した高僧たち
延暦寺は、788(延暦7)年に最澄(伝教大師)が開いた天台宗のお寺である。最澄は19歳で比叡山へ入り、桓武天皇の支援を受け中国で仏教を学んだ。中国で師事した僧が天台教学で、帰国した最澄がこれを日本で広く広めたのである。最澄が学んだ天台教学は、中国のお釈迦(しゃか)さまとも称されている智ギ(天台大師)という高僧が開祖で、今月11月24日は智ギの命日にあたる。
ちなみに延暦寺が仏教の母山と呼ばれるには理由がある。
のち浄土宗の開祖となる法然、臨済宗の開祖・栄西、曹洞宗の開祖・道元、浄土真宗の開祖・親鸞、日蓮宗の開祖・日蓮など名だたる名僧が比叡山内で修行し、現在も各人が開いたお堂や聖蹟が広い境内のあちらこちらに点在している。
もちろん、天台宗系の高僧もあまたで、例えば、おみくじを作ったと言われる良源(元三大師)、天国・地獄の概念を構築した源信(恵心僧都)、声明(仏教声楽曲)を確立した円仁(慈覚大師)など、枚挙にいとまがない。
●徒歩だけでは回りきれない広い境内
現在の延暦寺は、大きく分けて東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)の3地域で構成されている。
東塔は、最澄が延暦寺を開いた場所で京都や大津方面からの接続がよく、総本堂である根本中堂や大講堂、阿弥陀堂などが集まっている場所だ。「至宝展」が開催されている国宝殿もここにある。