日本の多くの大企業組織は勤め人が牛耳る社会である。今の経団連の会長、副会長はみんなサラリーマン経営者。大組織の中で前任者の仕事を否定し、新たな事業を起こしたり、既存事業を撤退したりするのは難しい。少なくともこれまでは、そんな乱暴な社員は会社の中では疎んじられる。先人たちがつくった土台のうえで、業務遂行に長けた人たちが上りつめるポストが今の経団連の会長、副会長ポストだと言える。創業者に憧れたり、創業経営者に迫り、学んだりしようとする意志を持つ者は少ないかもしれない。

 ソフトバンクは経団連に加盟してはいるが、かつて経団連のエネルギー政策と対立し、孫社長は経団連の会議で反論した。日本の組織によくある「同調圧力」をものともしない孫社長と手を組みそうな経団連の会長・副会長企業はあまり思い浮かばない。それだけに今回のトヨタが手を組んだのは意外だった。

 今回、トヨタとソフトバンクが提携し、日本や世界をリードする会社に育っていったとしたら、創業者精神に対する再評価がされるに違いない。大企業を飛び出しベンチャーを起こしたり、若いころから起業家を目指したりする挑戦をもっと評価する日本に生まれ変わるかもしれない。そんな時代の到来を夢見る私にとっては、今回の提携がやすやすと失敗してもらっては困るのだ。(Gemba Lab代表 安井孝之)

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