激戦が予想された沖縄県知事選は、辺野古新基地建設に反対する前衆院議員の玉城デニー氏(58)が、前宜野湾市長の佐喜眞淳氏(54)に約8万票の差をつけて完勝した。
なぜ、これほどの票差がついたのか。玉城選対の幹部は「勝因を一つ上げるとすれば」と前置きして、こう話した。
「若者たちの頑張りです。若い人たちがデニー支持のうねりをつくった。佐喜眞陣営にも若い人はいたけど、こっちはみんなボランティア。熱量が違った」
その手法も常識にとらわれない“型破り”なものだった。その名も「ポジティブキャンペーン」。具体的な中身は後述するが、先に選挙戦序盤で選対本部が抱えていた悩みを紹介したい。
選挙告示前、ネット上では玉城氏に対する中傷や事実無根の情報があふれていた。あまりにもひどい現状に、告示3日前には、玉城氏本人がデマを流した人を名誉毀損(きそん)で刑事告訴するほどで、誰もが選挙戦は誹謗(ひぼう)中傷が飛び交う荒れたものになると予想していた。
苦い経験もあった。今年2月の名護市長選では、移設容認派の新顔を推す国会議員がツイッターに「日ハムキャンプも逃げた。結果を出していない市長を変えるのは当然だ!」と投稿。明らかなデマだったがまたたく間に拡散し、当時の現職は敗北した。
当然、今回の選挙でも「デマ対策」は重要視されていた。では、つぶしてもつぶしても新たに出てくる誹謗中傷に、一体どうやって対抗すればいいのか……。そんな難しい課題に対して、若者たちから出てきたのがポジティブキャンペーンだった。その戦術はシンプルなもので、ネガティブキャンペーンに対抗するのではなく、玉城氏の人柄や政策をどんどんアピールして、それを拡散させていくという作戦だった。
内部で検討された文書には、こう書かれていた。
<ネガキャンには、こちらがポジキャンで返して、ポジティブ情報を飛び交わせる>
<デニーさんのちょっといいストーリーをシェア>
<デニーさんのあったかい(雰囲気がわかる)写真や動画をシェア>