「……なるほどね。いいかい。これは呪いなんかじゃない。第一にキミがころんだのは落ちていたバナナの皮を踏んだからだ。第二に、銅像が血まみれに見えるのには、科学的な理由がある」
「科学的な理由?」
「そう。この世に科学で解けないナゾはない。誰かが銅像に何かをしたんだ」
キョトンとする健太に、真実は続けてこう言った。
「銅像は銅でできている。それを考えて、銅像のまわりを見れば、何をしたのかは明らかだよ」
【解決編】
「銅像の黒ずみはさびなんだ。銅についたさびは、酸を使えば落とすことができる。そして、レモンの果汁には酸が含まれている」
こう言って真実は銅像に歩み寄ると、地面にころがっていたレモンを手に取り、その断面で銅像をゴシゴシとこすり始めた。
すると、少しずつ黒ずみが取れていく。
「あ。赤っぽくなった……」
「銅の本当の色は赤っぽい金色だからね。さびが落ちたことで、まわりの黒ずみとの差で赤っぽさが目立って、遠くからは血の色のように見えたんだ」
真実が説明していると、健太たちの担任で、理科クラブ顧問の大前先生がやってきた。
「やあ。ふたりとも、手伝ってくれるのかい?」
「どういうことですか?」
健太が聞くと、大前先生は校長先生に頼まれて、朝早くからレモンを使って銅像のさびを取っていたのだと言った。まだらに赤く見えたのは、まだ作業の途中だったからだ。
ちなみに、健太が踏んでころんだバナナの皮は、朝ごはんを食べ損ねた大前先生が、おなかが減って食べたものだったそうだ。(「科学探偵 謎野真実 シリーズ 特別編」おわり)
■科学トリックデータファイル
<さびとさび取りの科学>
さびは、空気中の酸素と金属が化学反応を起こしてできたものです。一方、酸にはさびを溶かすはたらきがあります。使い古した10円玉の表面には、さび(酸化銅)ができて黒ずんでいますが、レモン汁など、酸が含まれたものでふくと、きれいになります。
<やってみよう!>
黒ずんだ10円玉を、レモンで磨いてみましょう。元のピカピカの10円玉に戻ります。
※月刊ジュニアエラ 2018年1月号より

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