安倍政権が狙う9条改憲に、公明党がブレーキをかけているという。その背景にある、創価学会・名誉会長の言葉とは……。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員・藤生明さんの解説を紹介しよう。
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自民党・公明党の与党政権の圧勝で終わった衆議院議員選挙(衆院選。10月22日投開票)。3日後の25日、国会議事堂近くの会議場で、国民運動団体「日本会議」の主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が集会を開き、団体の共同代表の一人、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は約700人の聴衆に向けて、こう訴えかけた。
「5分の4の人々が改憲派に属する選挙結果が出た。この人たちに語りかけ、説得し、安倍晋三政権の下で憲法改正を成し遂げなくてはなりません」
憲法改正を実現するには、最終的に国民投票を実施し、賛成票が有効投票総数の2分の1を超える必要がある。国民の会によると、国民投票の有効投票総数を約6千万票と予測し、3千万票超の獲得が改憲実現の目標ラインだという。その際、憲法のどの条項を優先し、どう変えれば国民に受け入れられやすいのか、が頭の悩ませどころだ。
今年の憲法記念日に首相が打ち出したのが、「憲法9条への自衛隊明記」案、つまり1、2項は残して自衛隊の存在を書き込むというものだった。今回の選挙で自民党の公約にも自衛隊明記が盛り込まれた。
安倍氏に近い憲法学者の八木秀次氏は「(戦力不保持や交戦権の否定を記した)9条2項の削除が正攻法だ」としながらも、国民投票の過半数を押さえるには、首相の提案は現実的な選択だと評価。「加憲は公明党が主張してきた考え方でもあり、公明党も受け入れやすいのではないか」と話す。ところが、その公明党側がここに来て、慎重姿勢に転じているように見える。
衆院選の公約では「多くの国民は自衛隊の活動を支持しており、憲法違反の存在とは考えていない」と明記し、首相案にやんわりと異議を唱えてみせた。
次のページへ公明党関係者はこう話す…