【トランプ氏を巡る4つの論点】
■その1:移民・難民
<シリア移民は受け入れない>
アメリカは、これまで積極的に移民や難民を受け入れてきた。急増するシリア難民も、オバマ政権下では1年間で1万人を受け入れた。しかしトランプ大統領は、シリア難民の入国は「国益に有害」として受け入れ停止を決定。「テロを防ぐため」として、中東やアフリカ7カ国からの入国も一時的に禁止した。アメリカが移民や難民を排除する方向に転じると、似た動きが世界に広がるおそれもある。
■その2:環境
<パリ協定から離脱する(かも)
地球の温暖化を加速させないための国際的なルールを定めたパリ協定は、2016年に発効したばかりだ。アメリカは中国に次いで温室効果ガスの排出量が多く、オバマ政権が積極的に取り組んだこともあって早期に発効できた。ところがトランプ氏は、温暖化対策に費用がかかることから、パリ協定からの離脱をにおわせている。
■その3:安全保障
<「世界の警察官」をやめる>
世界一強い軍隊を持つアメリカは、よくも悪くも軍事力で世界に影響力を与えてきた。「世界の警察官」の役割を果たしてきたが、トランプ大統領は、その役割を下りると明言している。「アメリカは以前ほど豊かではないので、それぞれ自力で自国を守ってほしい」と言う。たしかに一理あるけれど、アメリカ軍がいることで安定が保たれてきた地域が世界にはある。急に撤退されるとバランスが崩れて、戦争や紛争が起きてしまうかもしれない。
■その4:経済
<自由貿易は見直す>
世界一の経済大国アメリカは、輸入品にかかる税金(関税)を下げる「自由貿易」を推進してきた。自国の経済発展のためになるし、関税を高くする「保護貿易」が国家間の対立を生み、戦争の一因になると考えたからだ。この路線をトランプ大統領は変えるという。「国内の仕事が中国やメキシコに奪われたのは、自由貿易のせい。関税を上げて国内に仕事を取り戻す」と言う。環太平洋経済連携協定(TPP)もやめると正式に決定。アメリカが保護主義になると、世界経済に大きな影響がある。
(監修/朝日新聞社「GLOBE」副編集長・大島隆)
※月刊ジュニアエラ 2017年3月号より