もんじゅも、他国に増して金食い虫になった。当初の建設費は4千億円といわれたが、約6千億円に。運転停止中も年間200億円、一日5千万円の維持費がかかっている。これまでの費用の合計は1兆円を超え、再開にはさらに5千数百億円が必要になる。国民の理解を超える額だ。
それにしても、なぜもっと早く撤退できなかったのか? 経済性がないのは外国も日本も同じだが、日本の原子力政策は、「無理な部分があっても修正できない」という悪い特徴があるからだ。税金を使う公共事業ではよくみられることだが、原子力政策では、とくにそうした傾向が強い。政策判断を間違った責任も、誰もとらない。
いずれにしても日本はこの20年で膨大な時間とお金を浪費した。
政府は高速炉の開発と、核燃料サイクルの推進を続けるとしているが、それは「カラ元気」だろう。もんじゅが廃炉に向かえば無理だ。
高速増殖実験炉(常陽)の設計を始めたのが1960年。50年以上の歳月と1兆円を大きく超える費用をかけた開発の代わりになるものを、そう簡単につくることはできないからだ。
また、日本がめざしてきた「高速増殖炉のサイクル」は、高速増殖炉、再処理工場、MOX燃料(プルトニウムとウランを混合した燃料)工場の主要3施設が同時に存在しないと成り立たない。日本では、再処理工場はほぼ完成済み。MOX燃料工場は建設中。しかし、高速増殖炉は、当面、存在しない。核燃料サイクルの「環」が切れてしまう。
実は、もう一つの核燃料サイクルがある。再処理工場で出るプルトニウムを燃料にして、一般の原発で利用する「プルサーマルのサイクル」だ。このサイクルは高速増殖炉なしで回る。しかし、これも一般の原発より発電コストが高いので「やる必要があるのか」という疑問が出るだろう。
結局どうなるか? もんじゅが廃炉に向かえば、日本の原子力政策には、戦後最大の変化が起きる。高速増殖炉の開発は事実上止まり、日本の目標だった核燃料サイクルの見通しも立たなくなるだろう。それは逆に、合理的なエネルギー政策をつくるチャンスでもあるのだ。(解説/朝日新聞編集委員・竹内敬二)
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