「もう少し先のことも予習しておきましょう。中学生くらいになると、子どもは自分らしさ、自分の生き方といったアイデンティティーを強く意識するようになります。そうなると、同性モデルである母親が、『どういう生き方をしているのか』ということが、娘にとって重要になってくるんです。生き方とは、日常のライフスタイルそのものです。専業主婦なのか、働いているのか、社会に貢献するボランティア活動などをしているのかなど……。母親は、娘にとって生き方をいちばん見近に見ることのできる同性モデル。どんなスタイルであっても、母親が自信を持って生き生きと過ごしている姿は、娘の幸福感にもつながっていきます」

 娘が中学生になってから、母親がそれまでのライフスタイルを急に変えるのは難しいことです。母親も、娘が小学生の時期に、もう一度自分の生き方を振り返り、向き合ってみる必要がありそうです。

 また、小野寺先生はこう警鐘を鳴らします。

「最近、自立しているお母さんが少ないように感じるんです。決して、仕事をしているから自立できているとは限りません。娘から精神的にきちんと自立できているかどうかなのです」

「娘のため」を思うあまり、娘が生活のすべて、娘が生きがいになってしまうと、将来の母娘の関係にねじれが生じる恐れがあると小野寺先生は指摘します。

「母親は、同性である娘を自分の分身のように見てしまうことがあります。そんなつもりはなくても、実は自分がやりたかったこと、できなかったことを、娘で実現させたいと思いがちです」

 自分の好きな仕事をしてほしい、幸せな家庭を築いてほしいといった人生観。ピアノやバレエ、英会話といった習い事も同様です。スタートは母親の意志であったとしても、今はどうでしょうか? 母親は時には子どもの様子をじっくり見つめてみることが大切です。娘自身が自らそれを楽しんでいるのなら心配はいりませんが、もしそうでない場合は要注意です。

「なにより、母親自身が生きがいを持っていることが大切です。それは、娘から自立して、ちゃんと自分の道を歩んでいるということ。娘を生きがいにしていると、将来、せっかく自分で歩こうとしているのに、足を引っ張るようになってしまう。それだけは絶対に嫌ですよね」

 同性ゆえに、甘えやすい。だからこそ、母親は将来娘に依存してしまう危険があるのです。

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