―― オンラインでの課題は?
梅崎 やはり、同時にしゃべることができないことですね。リアル授業なら、3人の先生がいれば3人の子どもを同時に褒めることができるけれど、オンラインではそれは無理。承認の機会をどう増やしていけるかが課題です。あと、子どもにとって気持ちがいいリズムっていうのがあって、それは大人が思うよりスピーディーな感じなんですが、オンラインではスピーディーにしゃべりすぎると伝わらないな、と感じることもあって。それは試行錯誤ですね。
竹谷 「オンラインでは同時に何人も話すとわけがわからなくなる」ということに子どもが慣れるまでに多少時間がかかったのは事実です。ですが一度順応すると早かった。ここではミュートにして、自分が話すときはミュート解除しよう、とか、声を出す代わりに紙に書いて画面で見せてくれたり、自分でパソコンの角度を動かして作品を見やすくしよう、とか。子どもたちがどんどん工夫をしだした。一人がやると他の子もどんどん考える。集団で伸びる方法ってオンラインでもたくさんあるんだな、と思いましたね。
― 親御さんからの反応は?
中山 休校中は、何といっても生活リズムを作るのが課題、というご家庭が多かったので毎日決まった時間に配信される「まいにち花まる」はありがたい、という声が多かったですね。当初は、1日4回、配信時間を決めてやっていたんです。ですが、やはりその時間にうまくネットに接続できなかったり、きょうだいで一つのデバイスを取り合いになってしまう、という声もあり、毎日7時に配信して、アーカイブで何度も見られるようにしました。ですから実際は何時に見てもいいのですが、「うちは7時から花まるタイム」と家庭内でルールを決めてくださった方も多かったようです。
― これからの構想は?
竹谷 約2カ月やってみて、リアル授業とオンライン授業、それぞれのよさがある、ということを改めて感じています。しかし、子どもたちはオンラインとリアルの差をどう感じているか、まだわかりません。子供だからリアルがいい、とひとくくりにもできなくて、おそらく一人一人違うのではないかと思っています。たとえば、口頭で聞き取るのが苦手だが文字を読むのは得意な子がいる。そういう子にはしゃべりっぱなし、という動画はきつくて、スライド等を使って文字で示してあげる機会を増やしてあげたほうがいいかもしれない。子ども自身がどこにやりづらさを感じているか、ていねいにひろって授業に落とし込んでいく。それを見つけるのが今は大事だと思っています。
梅崎 もともと大人数の授業が苦手な子にとってはオンラインによって参加のハードルが下がり、都合よく参加できた子もいます。オンライン授業はまだまだこれから進化していくと思っています。授業をやる側としては、「このコンテンツはオンラインでやりたい」「これはリアルでないとできないな」などいろいろ選べるといいな、と思っています。
中山 オンライン授業は遠方にお住まいでふだんは教室に通えない方のニーズもあります。今後はふだんの授業だけでなく、花まる学習会ならではの「サマースクール」や「野外体験」をどうしていくかも課題です。まさにこれは現在検討を重ねているところです。いろいろ状況を考えながらできるだけいい形で提供できればと思っています。
(取材・構成=AERA with Kids編集部・江口祐子)
※「AERA with Kids」では、花まる学習会代表高濱正伸さんが毎回ゲストを呼んで教育・子育て談義をする連載を掲載しています。