赤ちゃんを連れて歩いていると、突然知らない人から「母乳?」と質問される──。こんな経験、子育て中のかたならあるかもしれません。定期的に話題になりますが、最近もツイッターで議論を呼んでいました。プライベートなことを聞かれているようでいい気がしない、特に母乳が出なくて悩んでいるお母さんはなおさらだ、というのが総じて現代母親の感想です。二児の母である私も質問された経験があり、「なんでそんなこと見ず知らずの人に教えなきゃいけないの?」と思った口です。
ただ、「母乳?」の背景には年代間のギャップがあるようです。2020年10月のNHKの記事「母乳、出ているの?~母親のとまどい」によると、特に年配の方が「母乳?」と質問するのは、高度経済成長期の前、1950年代頃まであった「もらい乳」の名残ではないかとのこと。当時、地域によっては粉ミルクが入手しづらく、実母の母乳が出ないときには親せきや近所の女性が代わりに母乳を与える習慣があったそうです。年配の方は母子の心配をして「母乳?(出なかったら誰か紹介しようか?)」と言ってくれているんですね。
最近はSNSなどのおかげで、面と向かっては伝えられない本音を言い合いやすくなっている面もあるかもしれません。私自身、「母乳?」と聞かれたときは相手の真意がわかりませんでしたし、相手も目の前の母親がとまどったこととその理由はわからなかったでしょう。お互いの事情が明らかになるのはいいことです。
そこで、「母乳?」からは話が飛びますが、ちょっとここで現代を生きる母親としての本音を伝えさせていただきたく思います。アメリカ人と日本人のいわゆる“ハーフ”(※)を日本で育てていると、子どもたちの顔を見るなり開口一番「英語?」と聞いてくる人がいます。悪気のない質問であることは重々承知ですが、正直とまどいます。
※ハーフという表現は「半分」を意味するので失礼だ、ダブルやミックスという表現を使おうという考え方もありますが、「ハーフ」とはhalfという元々の意味を超えて日本語の固有名詞になっている気がするので、あえてこう表記しています。