――宝槻さんも、「風越」の教育に関わっているのですか。

 授業を担当したことがあります。「プロジェクト学習」というプログラム。目標を立てて、それに向かって準備や役割分担をどうするのか、どんな道具や知識・技能が必要かを議論しながら進めていく。文化祭に近いイメージで、保護者や、地元の人々を巻き込みLEDライトで夜の学校をライティングする「灯とう籠ろうナイト」を催しました。児童・生徒は「東京からの移住者」「軽井沢町民」「近隣からの通学者」の比率が大まかに「1対1対1」。保護者が学園に集まる機会が多いので、顔を出すうちに友達が増えています。

■一流大学合格よりも夢中になれることを

――将来の道もじっくり考えられそうな環境ですね。

 子どもに「親のエゴを押し付けない」ことが大事です。「高学歴が重要」という方程式を、僕は疑って見ています。中学受験を先導することもないし、もはや「一流大学に5人全員合格させよう」などとも思っていない。本人が夢中になれることを掘っていったら仕事につながった、という生き方をしてほしい。でも、それさえも押し付けないようにしないと(笑)。

――ご長男は12歳。将来の夢について話すことは。

 最近、「パパの会社を僕が継ぐかも」「パパみたいに起業するかも」と言い始めました。

――今後、教育移住を考慮に入れる人は増えそうです。

 リモートワークやオンライン学習体験は、「バーチャルはリアルを補完するもの」という従前の価値観を変えましたよね。コロナによって未来が早まりました。生きるために人生を
削り、やりたくもない仕事をする人は、今後減っていくはず。そういう未来が望ましいと僕
は思います。薪割りを楽しみながら、働き方、学校の通い方・学び方が変わっていく。家族構成や業種にもよるでしょうが、教育移住は、「ライフクオリティー」を上げることを実現できるのではないでしょうか。

◇宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)
1981年生まれ。中学生を対象に、歴史、宇宙、ロボットなどのテーマを探究する塾「探究学舎」代表。高校退学、大検取得を経て京都大学卒業。

(文/加賀直樹)

※『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2022」』より抜粋

【AERA English特別号】英語に強くなる小学校選び 2022 (AERAムック)

朝日新聞出版

【AERA English特別号】英語に強くなる小学校選び 2022 (AERAムック)
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