英語教育もICT教育も日本より進んでいる台湾へ――わが子とともに1年限定の移住を試みたコラムニストの二宮未央さん。『AERA English 特別号「英語に強くなる小学校選び2022」』で、小4の娘さんの成長ぶりを現地から報告してもらいました。
* * *
多国籍の子どもたちが、手元のブロックに集中している。
「Let’s make a robot!」
教員が、「少し頑張ればできそう」という適切な「壁」を投げかけ、彼らを自発的な学びへと導いていく。
ここは台湾・台中市のウェイガーインターナショナルスクールオブエクセレンス(以下WISE)。中学1年の息子と小学4年の娘が、1年限定で通っている学校だ。
コロナ禍の2020年夏、夫の台湾赴任に帯同する形で、東京から台湾への移住を決行した。決め手となったのは、当時の台湾が、30代でトランスジェンダーを公言する唐鳳(オードリー・タン)IT担当大臣が開発したアプリによって、マスクの流通を把握し、市中感染を封じ込めていたことだ。日常生活が大きく制限されていた東京からわずか2千キロ離れた台湾では、人々が自由に外出していた。
女性の蔡英文(ツァイ・インウェン)政権が、「2030年までに英語と中国語のバイリンガル国家達成」を掲げているのも魅力的だった。そんな多様性に満ちた環境で、子どもたちに教育を受けさせたいと考えたのだ。
台湾は、日本よりはるかに学歴社会で、高校卒業者の約95%が、大学をはじめとする高等教育機関に進学する。2018年の国際学習到達度調査(PISA)では、数学的リテラシーが5位と、6位の日本を上回る。家庭も教育熱心で、街を歩くと、「補習班(進学塾)」の看板を至るところで目にする。子どもと行った眼科の待合室では、小学生たちが必死に勉強していた。その姿を見た娘は思わず、手にしていたゲームをカバンにしまい、教科書を取り出すのだった。