2020年、文部科学省が定める教育課程の基準である学習指導要領が新しくなりました。公立小学校の英語教育はこれを受けて、大きな変化を見せています。『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2022」』では、公立小の英語教育の現場を取材しました。

3年生の理科は昆虫の成長の過程について。卵から成虫に至る経緯を説明するときの英文について、NETが説明する(写真/谷本結利)
3年生の理科は昆虫の成長の過程について。卵から成虫に至る経緯を説明するときの英文について、NETが説明する(写真/谷本結利)
絵とともにトンボの成長過程を書いたノートをタブレットで撮影する3年生男児。それを教室前のスクリーンに映して発表する(写真/谷本結利)
絵とともにトンボの成長過程を書いたノートをタブレットで撮影する3年生男児。それを教室前のスクリーンに映して発表する(写真/谷本結利)

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 挙手をして当てられた4年生の男児が黒板の前で割り算の問題を解いていた。小学校の算数ではおなじみの筆算の練習だが、日本人の安井美千代先生とNET(Native English Teacher)のライアン・モーリス先生の解説は全て英語だ。

 真剣な表情で問題に挑む男児に子どもたちから「がんばれ!」と日本語で声援が飛ぶ。最後までできたとき、安井先生が「Yes!」と喜びの声を上げた。すると子どもたちからも拍手がわき起こった。

 ここは愛知県豊橋市立八町小学校。2020年度に国語と道徳以外の教科を英語で教える、公立で初の「イマージョン教育コース」を設立した。定員は1クラス25人とし、外国籍の子どもや帰国子女を受け入れる5人の特別枠がある。入学者は希望者からの抽選で決まり、英語力は問わない。

 豊橋市はもともと英語教育に力を入れており、「英会話のできる豊橋っ子の育成プラン」を展開している。八町小学校では17年度から3年間、英語で学ぶモデル授業プランを作成し、算数や体育などで英語を使用する授業を実践してきた。この成果を受けて立ち上がったのが、イマージョン教育コースだ。同校の稲田恒久教頭は「イマージョンとはいえ、文部科学省の定める学習指導要領の内容を順守しています。指定の日本語の教科書と合わせて、それを英訳したプリントなどを使い授業を行っています」と説明する。

 授業は常に、英語で指導ができる日本人教員とNETの2人体制で、どちらかが主導するわけではなく、2人で補い合い授業を進める。新しいことや複雑なことを習うときなどは日本語でも説明をする。

「どの教科も基本的に、もう一つの通常クラスと同じ速さで進行します。算数や理科などの専門用語は英語だけでなく、日本語もきちんと習得させる仕組みです」(稲田教頭)

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稲田砂知子
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