『二月の勝者―絶対合格の教室―』(C)高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中
『二月の勝者―絶対合格の教室―』(C)高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中

「ドン引きだけど話の内容は面白い、と感じてくださる方もいるようです。心がけているのは、中学受験に対して賛成・反対どちらの視点からも読める内容にすること。作品で中学受験を疑似体験しながら、いろいろな考え方に触れていただけたらうれしいです」

 物語の舞台は、中堅進学塾「桜花ゼミナール」。主人公の黒木蔵人は、合格実績トップの大手進学塾を辞め、桜花ゼミナール吉祥寺校の新校長に就任した謎多きカリスマ講師だ。

「特定のモデルはいませんが、実際にお会いしてかっこいいと感じた先生方の雰囲気を黒木で表現したい。一見クールだけど、チラッと見せる本音に子どもたちを思う熱さがあるとか」と高瀬さん。5巻に出てくる「受験を『自分ごと』にさせる」いうセリフも、取材で聞いたある塾講師の言葉からヒントを得た。

「受験は他人(ひと)ごとではなく自分ごと。たとえそれが受験当日の2月1日だったとしても、『これは自分がやらなければいけないことだ』と思えた子は、いい受験ができるというんです。中学受験を成功させるためのキーが子どもの自立というのは、とても興味深いですよね」


■子どもはそれぞれ。子育てをする親への思い


 物語に登場する子どもたちは、ひたむきな努力家、天才肌、おっとりマイペースとそれぞれタイプが異なる。高瀬さんが「勉強ができる子以外にも、焦点を当てたい」と語る背景には、子どもたちを見守る親たちへの思いがある。

「受験の真っただ中にいると、どうしてもできるお子さんに目がいくし、自分の子と比べてしまう親御さんも多いでしょう。でも子どもの能力はそれぞれ異なって当たり前。桜花ゼミナールの子どもたちを見て少しでも気持ちが楽になってくれる人がいれば、この作品を描いた意味はあったのかな、と思います」

 柳楽優弥さん主演でドラマ放送も開始した。連載は受験校が決まり始める時期に差し掛かり、熱い展開が続く。

「中学受験の最新情報を知るために、取材は連載開始後も続けています。今は毎日偏差値表を見ながら、31人の塾生全員分の併願プランを作っているところ。これってもはや漫画家の仕事じゃないですよね?(笑)」

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