それでは、親はどうやって過去問と向き合い、相性の良し悪しを見分ければいいのでしょう。A君のケースのように、親が試験問題をみて、出題傾向まで分析してわが子に合う学校を探すのは至難の業。そんなことできっこない、という家庭がほとんどではないでしょうか。

 西村先生によると、そこはプロである塾の先生や家庭教師に頼るべきだ、と言います。しかし、「相談をしている余裕はもうこの時期ありません。先生に面談の申し込みをする時には、事前に『過去問で点数が取れていないから、ネックになっている教科・単元を知りたい』とか、『わが子に合う出題傾向の学校が知りたい』など具体的に面談内容を告知しておくべき」とアドバイスします。

 そうすることで、先生側も面談前に準備をしておいてくれることが期待できます。授業中に改めて子どもの様子をチェックしてくれたり、経験の浅い先生であれば、学校の出題傾向などを熟知しているベテランの先生や塾の教務課などから、情報を集めたりすることも可能になるからです。

 面談当日に持参するものとして、西村先生は、(1)過去問の答案用紙、(2)計算の跡などの書き込みがある問題用紙、(3)成績表などの資料、の三つを挙げます。これらをもとに、どういった対策がわが子に必要になるか、アドバイスを求めるとよいでしょう。

 例えば、過去問で失点していた算数の「速さ」の問題が毎年出る学校であれば、その単元を見直さなければいけませんが、問題集にある「速さ」の問題を全て解き直すのは大変な労力です。けれども、先生に「志望校でよく出されている速さの問題の種類をいくつかピックアップしてください」というふうにお願いすれば、弱点を効率よく穴埋めしていくことができる、という具合です。

 また、塾の先生に解答用紙を見てもらい、「失点はしているが、この問題ならあとひと押しで正解できたはず」という惜しい問題をピックアップしてもらい、そこを中心に解き直しさせるのも一つのやり方です。全くわからない問題をゼロから学び直すよりは、7~8割わかっていそうなものを洗い出すことができれば、子どものやる気を削ぐこともなく、効率よく点数アップに繋げていくことができるからです。

「『先生はお忙しいだろうから』『あまり何度も連絡したら迷惑がられるかもしれない』などという遠慮は、この際必要ないですよ。親の熱意は迷惑なものではありませんから」と西村先生は言います。

 1回だけの面談と言わず、小まめに顔を出し、塾や家庭教師の先生に味方についてもらう――それが、直前期の親にできる最良の一手となるようです。(鶴島よしみ)

<後編>では実践編として「あと10点伸ばすために親ができること」を紹介しています

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スローマリッジ取材班 鶴島よしみ

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