■取り組み方を間違えると、つらい経験しか残らない

安浪:あと、そもそも論なんですが、大手進学塾って最難関校の合格実績を出してお客さんを集めるじゃないですか。大手進学塾は“もともとできる子をもっとできるようにする”場所。“できない子をできる子にする”場所じゃない。できる子向けだから膨大な知識を覚えることが当たり前になってきます。塾が欲しがっている子って、例えるならもともとコップのサイズが大きくて、たくさん知識という水を入れられる子。まだ勉強に興味が向いてない、コップが小さい子にたくさんの水を入れるってこれはもう暴力です。

矢萩:確かに。自分の許容量を超えたものは主体的になれない。

安浪:ご相談者さんの義姉さんが、何をもって「中学受験はいい経験になる」と仰っているかわかりませんが、中学受験は取り組み方を間違えると「つらい経験しか残らない」ことにもなり得ます。もし、知識をどんどん入れることが「いい経験」であると考えるならば、その部分については向いていない子もいます。でも、今はいろいろな受験のスタイルがあります。ご相談者さんが将来、やはり中学受験をさせたいな、と思ったらわが子に合った中学受験のプロセスを見つけることはできると思います。

矢萩:そうですね。あと、一つのことに集中して、突き抜けたあとに興味がブワーッと広がっていくタイプの子は結構いるのですが、そういう子は中学受験ではないかもしれないです。一つのことを探究していくうちに、数学的な思考や論理的な思考が必要になったり、コミュニケーション能力を獲得していったり、語学も「原著にあたるために英語もやらないと」となったり。一つをやる上でどんどん広がっていって、結果として幅広い知識や方法が身についたりするわけです。そういう風に一定のテーマやジャンルを追いかけるタイプの主体性の場合は、一般的な中学受験の学びには向いていないですね。そういう子を潰してしまうのはもったいないです。

安浪:中学受験はバランスよく、ある程度のスピードで知識を習得することが求められますからね。

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