安部 確かに大人のほうが内省しないというか、言葉を適当に使うというか。僕、言葉の意味合いをきちんと定義できてないとイヤなんですよ。今日も採用面接があったんだけど、相手が「社会性のある仕事」と言ったので「社会性って何ですか」と聞くとうまく答えられない。

高濱 適当に使ってわかったふりをしてほしくないんでしょ。言葉の意味合いにこだわる人って僕のまわりにも多い。

安部 社会問題って、対象ではなく、個体の課題を群れに共有して解決する、そのプロセスのことだと僕たちは定義しています。個の問題のように見えて、実はそこにはその人の置かれている環境やシステムが深く関わっている。でもマイノリティーゆえに見えづらい。だからこそみんなでそこを掘って共有して、みんなの持つ知恵や資源を投入しないと解決できない。

高濱 自己責任ではなく、社会の問題としてみんなで関わることが大切だと。

安部 これは人間としての特徴だと思うんですよ。そもそも僕自身が昔「ザ・社会問題」だったので、マイノリティーに無関心ではいられない。

高濱 少し知っています。安部くんが社会問題だった頃の話は。

安部 (笑)。本当はね、「オレ、昔はワルかったんですよ~」と言うエピソードはあまり良くないと思っているんです。カッコ悪いですしね。でも今回はアエラウィズキッズですからあえて話します。僕は中高時代ほとんど学校に行っていないばかりか、家庭内暴力を起こして家にいられなくなったようなダメな人間で。そしてその頃は、本当に一人ぼっちでした。親も友人も先生も自分を疎む。だからこそ、僕は自分だけは自分のことを嫌いにならないぞと決めたんです。

高濱 それはいくつの時?

安部 中2です。僕の子ども時代はいい記憶がまるでないんです。まず小3くらいから父の仕事の関係で非常に貧乏だった。たんにお金がないだけでなく、借金とりに追われていたからいつも「夜逃げバッグ」を持たされて。

高濱 それはキツイなあ。

安部 一方で僕は国立大付属の学校に通って野球もやっていて、実はけっこう強くてスカウトも来たくらい。でもそれ以外はボロボロ。練習には行っても学校はほとんど行かずで、家庭では反抗しまくって。で、中2のとき、野球をやめさせようとした母に暴力をふるってしまった。

高濱 家を追い出されたくらいだから、相当ひどかったんだね。

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