■慰め過ぎるのが逆効果の場合もある

安浪:そうなんです。子ども自身はせっかく気持ちを切り替えたのに、塾に行ったら残念だった熱望校の合格者に友達の名前を見つけたとか、進学先を知った友達に「お前があの学校なんて意外」などと言われてまた荒れてしまった、などという話も聞きます。そんな時は、今まで頑張ったことに最大限フォーカスして、新しい環境に移るまでそっとしておいてあげて欲しい。子どももプライドがあるので、あまり慰め過ぎるのも逆効果の場合があります。

矢萩:受験に限らずですが、僕は「経験を糧にする」の一点張りです。結果が出たものをとやかく言っても仕方がない。人生なんて運もあるし、思い通りにいかないもの。その中で、次は少しでも自分の思ったとおりの方向に行けるようにするために、今回のことを糧にして、ちゃんと経験として落とし込んで行こうね、ということは繰り返し伝えますね。

 例えば、今回経験になったこと何?って聞いたり、改善点を一緒に考えてあげることもあります。具体的に考えることで、あ、その改善案って絶対今知ってよかったね、これって失敗しないと得られない考えだったよね、っていうふうにマイナスをプラスに転じていく。つまり、失敗がいつまでもマイナスなものだっていう感覚を変えていきます。

安浪:確かに。全勝した子は確かにすごいけれど、悔しい経験した子のつらさは全勝した子には絶対にわからない。そのつらさを乗り越えることでものすごく成長するし、それが人間としての深みや魅力になっていくと思います。いま、子どもにそれを言ってもわからないかもしれないけれど、それが10年後とかに分かってくれたらいいなって思います。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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