小石川高校最後のスピーチ。栗原先生はヴィスコンティの映画「山猫」から、「同じであり続けたいのであれば、変わらなければいけない」という老貴族の台詞を引いて、理解を求めた。「小石川には府立五中から続く立志、開拓、創作と、自由と自治の理念がある。この小石川の精神を受け継ぐために、6年間の新しい教育に変わります」と、締めくくった。

 この時のスピーチが同窓会の会報に転載された。都立小石川の前身である府立五中時代の高齢の同窓生から、「改革への強い意志と固い決意を読みとりました」との手紙とともに、「山猫」の映画のシナリオ写真集が送られてきたこともあった。

 小石川高校の閉校を見届け、栗原先生は1年定年を延長して2013年に退職。現在の小石川中等教育学校は卒業生160人のうち、毎年コンスタントに東大へ2桁の合格者を出し、「理数系に強い学校」として知られ、国際科学オリンピックへ出場する生徒も輩出している。

(文/柿崎明子)

第1回「校長就任1年で「中退率」半減 評判“最悪”だった都立高校をよみがえらせた名物校長の3年間」から続く

○栗原卯田子/東京・中野区出身。1976年東京学芸大学大学院修了(教育学修士)後、東京都立高校の数学科教員に。八丈高校、小松川高校、本所高校などを経て、閉校が決まっていた水元高校(葛飾区)に最後の校長として着任。その後は中等教育学校を併設した小石川高校(文京区)の第20代校長として高校の最後を見届けつつ、並行して小石川中等教育学校の校長を6年間務めた。定年退職後、8年間にわたり成城中学校・高等学校(新宿区)の校長に就任し、男子伝統校を復活させた。

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ライター 柿崎明子

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