最近よく、新聞やテレビのニュースで目にする「円安」という言葉。なぜいま円安が起きているの? 円安になると、私たちの生活にどんな影響が起きるのだろう。現在好評発売中の『ジュニアエラ6月号』の記事から、ジャーナリストの一色清さんがわかりやすく解説する。
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「円安129円台『異常なスピード』」。4月中旬、新聞にはこんな大見出しが載った。アメリカの通貨であるドルに対する日本の円の価値が下がり、1ドルが129円台になったという記事だ。
2022年に入ってから3月初めまでは1ドルが115円ぐらいだったので、1カ月半ほどで15円近く安くなったことになる。これは20年ぶりの安い水準だ。
円安の原因は、日本とアメリカの金利の差が広がったためだ。
日本もアメリカも景気がよくないために、金利をゼロに近いところまで下げたままにする政策を長くとっていた。金利が低いとお金を借りる人が増えて景気がよくなり、物価が上がる。
ここにきてアメリカの物価は上がりすぎが心配されるようになり、アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は3月、金利を上げて物価を抑える政策にかじを切った。
一方、日本の物価はまだ心配するほど上がっていないとして、日本銀行は超低金利政策を変えていない。これにより、アメリカと日本の金利差が広がった。
水は高いところから低いところへ流れるが、お金は金利の低いところから高いところへ流れる。金利の高いところでお金を運用したほうがもうかるためだ。つまり、今はドルを持ったほうが金利収入をたくさん得られるので、円を売ってドルを買う動きが強くなっているのだ。
円安になると、輸出をしている企業がもうかるといういい面があるが、輸入品の値段が上がるという悪い面もある。単純に言えば、1ドルだった商品の輸入価格が115円から129円に上がるのだから、小売価格にも影響するのは当然だ。
次のページへガソリンや小麦の値段が上がる