山口県萩市にある至誠館大は数奇な運命を辿ってきた。1999年に萩国際大を開学したが、当初から学生募集で苦戦を強いられる。2005年に民事再生法を申請して外部からの支援を仰いだ。学校法人、企業などが救いの手を差し伸べる。07年、コンサルタント会社が経営陣に加わり新体制でリニューアルをはかった。校名を日本福祉文化大に変更しようとしたが、他大学関係者から類似した大学名があるという指摘を受け、山口福祉文化大で落ち着いてスタートした。
しかし、学生募集で苦戦し経営が立ちゆかなくなり、12年に民事再生法を申請する。その後、まもなく他の学校法人が支援するが、経営をうまく軌道に乗せられず手を引いてしまう。その後も別の学校法人が経営にかかわるが、撤退。菅原学園などが経営に加わって大学運営のかじ取りをすることになり、14年に至誠館大に衣替えし、今日に至っている。
校名は、その大学の顔である。アイデンティティー、設立者へのリスペクト、地域への帰属性、教育の方針や特徴、遵守する宗教の教え、建学の精神、思想などが込められている。
名前が多くの人に広く浸透するか、学生や地元から愛される名称になるかは、優れた教育、最先端の研究、そして私たちを幸せにしてくれる社会貢献にかかっているだろう。
(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)
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