矢萩:ご質問にある「絵画の点数」というのは、おそらく入試で求められる技法試験のことを指していると思います。ただ、それは絵画の技術を本格的に極めることとは別物ですし、もし将来その技術だけで食べていこうとすれば、クラシック音楽で生計を立てるのと同じくらい大変な道になるでしょう。小5の段階で、そこまで決められる話ではないと思います。

長い人生の中でやりたいことを見極めていけば良い
安浪:お母さんが提示した選択肢に対して「どれも嫌」と言うのは、実はまだ幼いから線引きができないのかもしれませんね。「受験はしたいけれど勉強は嫌」というのと同じです。矢萩さんもよくおっしゃっていますが、ときには結果にこだわらず、とりあえず受験を経験させてみるのも一つの方法かもしれません。合否そのものよりも、挑戦した経験が将来の学びの糧になることもありますし。
矢萩:「どれも嫌だ」と言っているときは、「じゃあ嫌じゃないものが見つかるまで待とう」でいいんです。親が「時間の無駄」とイライラしてしまうと、子どもはその空気を敏感に感じ取って「どれも嫌」と言いやすくなってしまうんです。親は「協力はするから、嫌じゃないものが見つかったら教えてね」というスタンスで待てばいいと思います。
安浪:親御さんからすると「今決めないと間に合わない」と焦るかもしれませんが、間に合わないことなんてないですよ。今はただ「好き」なだけかもしれませんが、「真剣に究めたい」と思う気持ちが中学や高校で芽生えて、本気で行きたい学校が見つかったら、それから絵画や勉強を頑張るようになるかもしれない。長い人生の中で、本当に工作や造形が好きなら、中学受験がすべてではないと思います。
(構成/教育エディター・江口祐子)
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