特に伝手がない場合は、家庭教師派遣会社に紹介を依頼します。個人指導、オンライン指導のほかに、3~5人の少人数クラスもあり、平均価格は個人指導で一時間約37ユーロ(約6,300円)、グループ授業は一時間約22ユーロ(約3,800円)です。教科は、算数、英語、ドイツ語(国語)の順で人気があり、学年によってはスペイン語やフランス語などの外国語も需要があります。

 このような家庭教師派遣会社を通してナハヒルフェを受けている家庭の負担は、平均して年間約750ユーロ(約12万7千円)。60%以上の親が高すぎると言っていますが、日本の小学生の塾代と比べると、そこまで高額ではないですね。

市が提供する無料の勉強支援も

 オーストリアの市民大学や慈善団体による無料の学習支援も提供されていて、貧困家庭や、言語支援が必要な子どもたちだけでなく、新学期に向けて苦手教科を克服したい子どもなど、誰でも気軽に利用することができます。6~14歳の子どもが対象の10人以下の少人数制で、学校の空いた教室や区の公民館などで、家庭教師や塾とは異なる形態の学習支援を行っています。

小学生のドイツ語文法の宿題。文章から動詞を見つける練習です。
小学生のドイツ語文法の宿題。文章から動詞を見つける練習です。

 学童保育のような雰囲気で、宿題やテスト勉強をしながら、わからないことがあったら質問できる環境が作られていて、ドイツ語、英語、算数の主要科目以外にも、ドイツ語を母国語としない子どものためのコースもあり、勉強サポートができない家庭の心強い味方となっています。

 家庭教師や学習支援は、家庭の外で子どもを教えてくれる人がいるという点は心強いですが、一方で、子どもに合う先生を探すのに時間がかかる、落ちこぼれ防止にはなるが、成績上位を目指すには物足りないなど、親にしかできないサポートもあると感じています。

 親の学歴が高く、勉強を見ることができる家庭ほど、子どもの教育レベルが高い、オーストリア。その社会構造の裏には、家庭外で勉強を支えるサービス不足、という背景がありそうです。子どもがだれにも頼ることなく自力で成績を維持できるようになるまで、親は子どもと二人三脚で学び続けるのが、現時点ではこの国の最適化された教育の姿なのかもしれません。

※前編<中学受験も塾もない国、オーストリア 子どもの教育レベルのカギを握るのは「親の学力」>から続く

【前編】中学受験も塾もない国、オーストリア 子どもの教育レベルのカギを握るのは「親の学力」
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御影実
オーストリア・ウィーン在住ライター・ジャーナリスト 御影実

2004年よりオーストリア・ウィーン在住。国際機関勤務を経て、2011年より輸出輸入業の傍ら、オーストリアの社会、歴史、文化、時事関連の寄稿や監修、ラジオ出演や取材協力を行う。掲載媒体は、「サライ.jp」(小学館)、『るるぶ』(JTBパブリッシング)、『ハプスブルク事典』(丸善出版)等。中学生、小学生、幼稚園児の3児のバイリンガル育児中。世界 100 カ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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