オーストリアでは、大学進学を目指す場合、10歳で「ギムナジウム」という日本の中高一貫教育校にあたる学校に進むのが一般的。ですが、昼過ぎには学校が終わってしまい、学校の授業だけでは必要な学習内容をカバーできないため、家庭学習が必須になってくるといいます。でも、親が共働きで忙しく、子どもの勉強をサポートする時間がない家庭ではどうしているのでしょうか。現地で3人の子どもを育てるライターの御影実さんのレポートをお届けします。※前編<中学受験も塾もない国、オーストリア 子どもの教育レベルのカギを握るのは「親の学力」>から続く
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留年対策には「ナハヒルフェ」
親が子どもの勉強を十分に見てあげることができない家庭では、子どもの成績が振るわずに、留年してしまうケースもあります。このままだと子どもは留年確実という危機感を持ったオーストリアの親が考えるのは、「ナハヒルフェ」の力を借りることです。直訳すると「事後支援」という意味で、いわゆる「留年救済用の家庭教師」です。
日本で家庭教師というと、成績の良い子のためのものというイメージですが、オーストリアでは「落ちこぼれないため」の藁をもすがる存在です。
共働き家庭の増加の影響もあり、ここ数年で小中高生のナハヒルフェ需要は急増し、ナハヒルフェを利用したことのある子どもは、30%から50%に増えています。最も多い利用者は高校生ですが、次に多いのが小学校5年生から中学2年生です。
家庭教師探しは、主に親戚や知り合い、学校、家庭教師派遣会社などを通して行われます。親戚や知り合いに定年退職した学校の先生や大学生がいれば、真っ先にお願いされます。
学校が斡旋してくれる場合もあり、ギムナジウムの高学年が低学年の家庭教師をする、チューター制度がある学校があります。長男の学校でもこのシステムを採用していて、教室の片隅や休憩スペースで、高校生の先輩から一対一で教わっている、小6の児童の姿をよく見かけます。
チューターになれるのは、成績が良く、二人の先生から推薦を受けた生徒です。授業料は無料のところもありますが、長男の学校では45分で9ユーロ(約1,500円)。授業を受ける児童の家庭から直接支払われるので、高校生にとってはバイト感覚です。
