仕事を辞めると、私は一気に時間ができた。息子が小学6年生、娘は小学3年生の秋だった。2人とも学校にほぼ行かず、私は朝から晩までのほとんどを子どもたちと一緒に過ごした。生まれて初めて経験した、時間に追われない生活。心穏やかに日々を過ごしていた。

息子の変化

 息子は中学生にあがると、完全に学校へ行かなくなった。暴れることは少なくなったが、あまり外出をしなくなった。

 そんなある日、私は突然に思い立って娘と二人でディズニーランドへ行くことにした。学校へ行かないので、その日の気分で自由に予定を決められることは本当に楽しい。

 息子は一緒に行かないだろうと決め込んでいたのだが、当日朝になり息子も行きたいと言うので3人でディズニーランドに出かけることになった。このディズニーランドが、思いがけず、息子にとっての大きな転換のきっかけになる。

 この日は息子にとって久しぶりの外出でとても楽しんでおり、閉園時間まで3人で心ゆくまで満喫した。しかし帰る時間になり、ディズニーランドの門を出てバス乗り場に向かいはじめると、息子が急に吐き気をもよおし、機嫌も悪くなった。久しぶりの外出で、息子の体力の限界を超えてしまったのだ。どうにか家まで帰れたものの大変な思いをした。その経験が息子にとっては相当ショックだったようだ。

 その数日後から息子はトレーニングをすると言いだし、私のヨガマットをリビングに敷いてYouTubeを見ながら自分なりのトレーニングを毎日はじめた。私にしてみたら、リビングでトレーニングされるのは邪魔だしうるさいし、という感じで、さして関心もなかった。

 しかし、夏になり薄着になると、息子の体がシュッと引きしまっていて、家族みんな相当びっくりした。息子がトレーニングを始めたのが冬であり、毎日ダボダボの服を着ていたうえ、顔はあまり変わっていなかったので、息子の体の変化に誰も気づいていなかったのだ。

 一番驚いていたのは息子本人だった。“ディズニーランド事件”が毎日のトレーニングにつながり、それが息子にとっては「コツコツ継続することで大きな成果を得られる」と気づくきっかけとなり、まさかの大きな成功体験になったのだ。そのころから息子の顔つきまで変わっていった。

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