「行く」と言うのに足が動かない

 それからはこれまでの大変さとは比較にならないほどの苦しい生活がはじまった。息子の勉強の遅れなど心配事も増え、私も保育園の登園しぶり延長線上とは言っていられなくなった。息子は夕方になると「明日は学校へ行く」と言って、翌日の時間割を確認し、宿題をして、準備をした。毎日の漢字テストの勉強を、夜11時ごろまでやっていた日もあった。

 しかし朝になると、まず起きてこない。どうにか起こして食事をさせる。お友達がお迎えに来るが息子は一向に出ていこうとしない。友達に先に行ってもらうように伝え、ここからは修羅場だ。

 足が固まって全く動かない息子を私と夫で抱えて外に出す。だがそこから全く動かない。息子がそのままどこかへ走って逃げていってしまうこともしばしば。数センチずつ前に進ませて、学校まで連れていった日もあった。娘を保育園に連れていかなくてはならないが、それどころではなく、近所に住む実家の母に電話し娘を保育園に連れていってもらう日も多かった。

 私の職場は東京だったため、朝7時46分の電車に乗らねばならない。ぎりぎりまで頑張るがどうにもならず、夫と息子を残し先に家を出る。私が出たあと、夫も会社に行かなくてはならないのだが、今度は逆に息子が玄関に立ち塞がり夫を会社へ行かせようとしない。

 私は職場の最寄り駅に着くとすぐに家に電話をした。息子は寝ていることが多く、ほぼ電話にはでない。仕事中も何度も電話。息子の声を聞くと安心し、「今日は冷凍庫に〇〇があるから、それを食べてね」と伝える。13階のマンションに1人で過ごしている息子が心配で心配でしょうがなかった。

「今日は学校へ連れていけたよ」。そんなメッセージが夫から届く日もあった。夫は仕事を遅刻したりしながらも、息子を学校へ連れていこうと一生懸命頑張っていた。学校まで連れていけた日は先生からもメールでご報告をいただいた。

逃げ回る息子が非常階段から落ちそうに

 ある朝、いつものように息子を抱えて家の外に連れ出し、どうにかエレベーターの前まで連れていく。エレベーターが1台しかないため、待っている時間がとても長い。

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