安浪:すごい。お子さんたちはまだ小さい頃ですよね?
佐藤:はい。1回目の時は長男と次男は小学生、三男は幼稚園、長女は2歳でしたね。
安浪:子育てだけでもめちゃくちゃ忙しい時期じゃないですか!そこにご主人の選挙の応援なんて想像を絶します。
佐藤:朝、主人が駅前に立って辻立ちしていると、通学途中の息子たちが手を振ってくれたそうです。私も選挙カーの上に登って「佐藤の妻でございます」って応援演説をやりましたよ。スーパーの前にパラパラっといる人に話すより、駅前で大勢の人に向かって話すほうが、私は気持ちよかったですね。
安浪:まさに今の佐藤さんの活動に繋がりますね。そしてご家族全員で応援していた様子が目に浮かびます。
佐藤:結果的には2回とも当選はできなかったんですが、やってよかったと思っています。うちの子どもたちは昔から「早く社会人になって投票に行きたい」と言っていたんですが、そういう意識を持てたことも主人の影響が大きいと思います。
人のために何かをやるのが好き
安浪:それからお子さんたちのサポートに全力を傾け、お子さんたちが全員医師となって独立した今、またご主人のお手伝いをされているんですね。本当に佐藤さんは「奉仕の精神」に溢れている……。
佐藤:どうなんでしょうね。私は「奉仕」とは思っていなくて、人のために何かをやるのが好きなんですね。私の母も割とそういう人だったので、性格もあるでしょうけれど。
安浪:そして、やはり体力でしょうね。体力があるからこそ、佐藤さんはいつも元気でいられる。でも、お母さまたちの中には、体力に自信がない方もいらっしゃると思います。
そんな方が佐藤さんのスタイルを無理に真似すると、かえって大変なことになってしまう。とくに中学受験は、親がのめり込みやすい世界ですから。最初から「自分はここまで」と線引きをして、できる範囲で支えることも大切だと思います。
佐藤:そうかもしれないですね。でも、今裁判の世界を見て、私は子育てという狭いけれど、本当に美しい世界にずっといたんだな、としみじみ思いました。
安浪:美しい世界!
佐藤:そうです。目の前の子どもの姿だけを見て、どうしたらこの子たちが楽しく勉強できて幸せになれるかな?ということだけをひたすら考えてきた。無駄なことを考えなくてよかったし、とても本質的な世界だったな、と。
安浪:なるほど。中学受験は、時に親子を苦しめる泥沼にもなり得るものです。でも佐藤さんは、子どもの成長だけを信じ、余計な比較や不安に惑わされず、まっすぐ目の前の子どもを見つめ続けた。だからこそ、最後まで「本質」を見失うことなく、子育てを貫くことができたのだと思います。
(構成/教育エディター・江口祐子)

佐藤 亮子,安浪 京子

