でも今までの(一斉授業オンリーの)授業スタイルから抜けられない先生は、やっぱり一斉に同じことをさせようとします。でも本来はそういうツールではありません。教員による一斉指導中心の授業スタイルから、どのように子ども主体の学びに移行していくか。デジタル教科書の特徴を活かし、子ども自らが学びを深めていく。こうした “授業観の転換”を考えた上で、デジタル教科書の在り方を検討していく必要があります。
デジタル教科書の今後の課題とは?
――デジタル教科書の課題も教えてください。記憶力や視力の低下が問題視されることもありますが、中川先生はどうお考えですか。
よく記憶の定着についてデジタル教科書が批判されることがありますが、個人的には記憶定着に関して実際の結論は出ていないと思います。視力も適度な使い方をすればいいのです。紙でも暗い場所でずっと読んでいれば視力に影響があると思います。ですから大切なのは適正な使い方です。学校の先生方はそういう点にはとても気を遣われていると思います。
1番の課題は端末環境に左右されることです。デジタル教科書は端末で使うもの。端末は情報通信ネットワークで動いている。となると、情報通信ネットワークの環境が脆弱だと動画教材などの視聴に大きく影響します。例えばみんなで一斉に使うとうまく動かない地域や学校があります。こうした整備を充実させることが重要なポイントです。
端末の機種も通信環境も自治体によって違います。自治体によってはデジタル教科書を増やしているところもある。こうした自治体格差は続くでしょう。よく小学校で「(使っている端末によって)カメラ機能の差が大きい」という話を聞きますが、これは今後クラウド環境でデジタル教科書が使われることになれば、機種による差はそこまで大きくならないと推測されます。
また、端末は機器なので劣化は当然あります。今ちょうど更新時期です。1人1台端末が始まってから5年超。子どもたちがたくさん使っていることを考えると、本当は3年くらいで回してあげたいなと個人的には思います。
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