ですが文部科学省の調査研究データによると、教員の学習者用デジタル教科書の使用歴が長くなるほど使用頻度も高まっています。使用頻度が高まると活用効果の実感も得られます。つまり、「使えば使うほどいいね」と良さを実感するのです。

 一方で実際には教員間の格差もあります。ですから教員研修は大変重要です。国は令和10年度(2028年度)にデジタル教科書を実践的に活用している学校の割合が100%になることを目指しています。

出展:文部科学省

「読む教科書」から「書く教科書」「共有する教科書」へ

――デジタル教科書のメリットについて教えてください。

 デジタルであるからこその機能はたくさんあります。たとえば拡大表示や書き込み、消去、音声読み上げ、背景色の変更、ルビの表示などです。このような個別に対応できる機能は、特別な配慮を必要とする子どもたちにとっても大変便利で、学校からも肯定的な声が上がっています。

 私はデジタル教科書を使う全国の子どもたちを見てきましたが、紙の教科書とは違う使い方をしている様子をたくさん目にしてきました。例えば「書き込む」「消す」という行為です。紙の教科書でもできますが、じゃんじゃん書き込むかというとそうはいきません。書き込みすぎると「そんなに書いてどうするの」と先生から注意を受けることも考えられます。でもデジタル教科書に子どもたちはじゃんじゃん書き込みます。なぜならすぐに消せることを分かっているからです。そして本当に必要な書き込みは保存します。こうしたデジタルの特徴を子どもたちは理解して使いこなしています。

 今までのような「読む教科書」から「書く教科書」「共有する教科書」へと役割が変わり、紙の教科書ではできなかったことが実現しています。今後は学校ぐるみで情報活用能力など学習の基盤となる資質・能力を子どもたちに身につけさせていくことが必要になると思います。

――デジタル教科書は授業でどのように使われるべきでしょうか。

 1人ひとり持っているにも関わらず、一斉に端末を出して一斉にしまうという授業スタイルでは端末の良さが半減してしまいます。これを揶揄して「デジタル一斉授業」と呼ばれることもあります。せっかく1人1台持っているのですから、自由に選択して使えば良いと思います。

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