例えば「プロジェクトがちょっと立て込んでいて、1か月の取得は難しい」といった回答があった場合でも、本人が本当に必要ないと考えているのか、本音では取得したいと思っているのか、パートナーの要望はどうなのかを人事側で1件1件念入りに確認し、必要に応じて再検討をお願いするようにしています。実際に、はじめは「忙しいから」と1か月未満の取得を希望していた社員と上司に再検討を依頼し、1か月以上の取得に変えてもらったケースも。このような働きかけを通して、「男性育休は1か月以上の取得が当たり前なんだ」という意識を社内で醸成していけたら、と考えています。

——上司層の意識改革はスムーズに進みましたか?

 男性育休を取得した社員とその上司のインタビューを社内サイトに掲載する取り組みを2022年から行っています。アクセス数の高さから、社内のマインドチェンジに一役買っているのではと感じています。

 また、「自分の時代には男性育休を取得できる空気ではなかったため、子育てに十分関われなかったことを後悔している」「パートナーから今でも当時のことを指摘される」という管理職も少なくありません。彼らが、「自分の時代には難しかったけれど、今は会社が推進している制度なのだから、ぜひ活用してほしい」と部下に積極的に勧めるケースも増えているようです。

「育休から戻ったら元通りに働けるんだよね」という“思い込み”

——社内からはどのような反応がありますか。

 育休の取得者からは、「育休=女性というイメージがあったため、NECがこんなに手厚いことをするのに驚いた」「引き継ぎさえしっかりしていればOKと上司もポジティブだった」「シートを使ったことで、自分の希望する育休取得方法・期間を整理することができた」といった声がありました。

 復帰後には“育児両立シート”も用意しています。時間外勤務や休日出勤、出張対応の可否、パートナーの就労状況、保育園などの送迎体制など、具体的な情報を記入し、復職後の働き方の変化や家事・育児負担を明確にしてもらいます。

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