――「学校に行かせなきゃ」という思いから自由になれたのは、どのようなきっかけだったのでしょうか?
一発逆転みたいな劇的なきっかけがあったわけではなくて、本当に“じわじわ”です。いろいろな人との出会いや、日々の経験の積み重ねで、少しずつ呪縛が剥がれていきました。そのなかでも印象に残っているのが、もっちんが回復したあとに訪れたフリースクールの中学生たち。とても優しく、まっすぐに自分の言葉で語る姿にふれて、「学校に行かなくても、こんなふうに素敵に育つんだ」と衝撃を受けたんです。それまでは、どこかで「学校に行っていない=不完全」という思い込みがあったのですが、彼らの姿を見てから考え方が大きく変わりました。
――この春に中学生になったもっちんくんは、どんな日々を過ごしていますか?
習い事や地域のコミュニティなどのちょっとした居場所をたくさん頼って過ごしてます。「学校が絶対」という価値観が本人にないからか、学校は気負わずに短時間登校してます。とはいえ、「毎日計画どおり!」なんてことはなく、グダグダな1日もあれば、充実した1日もあります。
「特別視しない」からこそ、見えてくる子どもの本当の姿
――不登校の子どもと接するうえで、特に大切にしていることは?
「不登校だからしかたない」と特別視しすぎないことです。しかたないと思ってしまえば、できることまで「できないまま」になってしまい、子どもの成長の機会を奪ってしまうと思うんです。私は子どもをひとりの人間として扱い、フラットに接するようにしています。家事も分担するし、学びの面でも応援しています。例えば、もっちんにとって反復学習は脅威だったけど、自分で必要性に気づいてからは反復学習も頑張るようになりました。長年の経験から、「実績が自信の根拠になるタイプ」だとわかっていたので、そこを丁寧に積み上げています。
――ホームスクールでは親の負担も大きいかと思います。ご自身のケアはどうしていますか?
私は「自分を整えることに全振り」しています。スーパー銭湯に行ったり、月2回カウンセリングを受けたり、お絵描き教室にも通っています。うつを経験して、「親がボロボロだと、子どもに何もしてあげられない」と痛感したので、まずは自分を満たすことがとても大事。子どもって、親が動揺しているのが一番ウザいと思うんですよ(笑)。だからこそ、余裕がある姿を見せるのが一番のサポートだと思っています。
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