「子どもは本来、父親・母親の両方から保育される権利を持っているのに、夫婦の役割分担意識でその権利を奪っていませんか」という安藤さんの言葉は印象的でしたね。
最終的には「チームビルディングや、人材育成にも有効だったという意見もありますので、だまされたと思って、チームメンバーに(男性育休を)取らせてみてください」なんて説得しながら、少しずつ少しずつ、社内の意識を変えていったのです。
「家族を大事にする人から家を買えてうれしい」
——導入から6年。社内からはどんな声が上がっていますか。
2025年3月現在、これまで3355名の男性社員が取得対象となり、そのうちすでに子どもが3歳の誕生日を迎えた社員が延べ2361名。全員が1か月以上の育休を取得しました。
取得後のアンケートではポジティブなものが多く、「家事や育児に参加することで、住宅メーカーの営業として、共感力と提案力がアップした」「料理に目覚めて料理教室にまで通いました」「送迎だけでなく、幼稚園の読み聞かせのボランティアにも行きました」など、育休中の充実ぶりを感じさせる声や、「育休で子どもと充実した時間を過ごせたので、チームメンバーが育休や介護休を取得するときには進んでサポートしたい」という声も。休みをカバーし合うことで組織に“助け合いの風土”が育っていると感じます。
また、お客様から「家族を大事にする人から家を買えてうれしい」という言葉をかけていただいて、会社の取り組みをちょっと誇らしく思えた、なんて声もありました。社員のエンゲージメント向上にもつながっていると思います。
150以上の組織を巻き込み、ムーブメントを起こす


——社内だけにとどまらず、『IKUKYU PJT.(育休プロジェクト)』として発信を始めました。
一社だけで取り組みを進めているだけでは、なかなか社会全体の理解が進みにくい。企業として何かできないか、という思いから情報発信をスタートしました。2019年には、9月19日をゴロ合わせで「育休を考える日」と制定し、育休に関する白書を発表し、産官学で男性育休を考えるフォーラムも開催。2022年からは、「『日本でも男性の育児休業取得が当たり前になる社会』を目指して9月19日に一緒に何か発信しませんか?」とお声がけし、企業や自治体、大学など賛同組織を募っています。
2025年3月現在、154の企業や自治体に賛同していただいています。
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