おすすめポイント
挿絵を「見たことある!」と思う子どもが多いはず。絵本『ぐりとぐら』のシリーズをつくった中川李枝子さん、大村(山脇)百合子さんの姉妹コンビなので、童話のひとり読みをはじめたばかりの子にとって親しみやすさは満点です。
友達のくみこちゃんに「いいものをもってきた」とエルタを見せたかんたは、くみこちゃんに、それはあたしのカエルでドレミちゃんだと言い返され、ひっぱりあいになります。保育士経験のある中川さんならではの、やわらかい言い回しながら、負けず嫌いの子ども同士の心中がよく表現された場面は臨場感たっぷりです。

雨が降りエルタが「レロレロレロ」と歌い出したところから一気にファンタジーの世界へ。雨がやむとどこまでもつづく青い海と緑の船があらわれて、エルタは「ぼくたちのふね、うたえみどりのはっぱごうだよ」とかんたを誘って乗り込みます。かんたが甲板のベンチに座っていいかと聞くと「どうぞどうぞ。このいすは、ぼくたちのもの。」、バナナを食べていいかと聞くと「どうぞどうぞ。このバナナは、ぼくたちのもの。」……ぐんぐんエルタの世界に引き込まれます。
船から島へ虹がかかり、渡りはじめたふたり。エルタが先に落っこち離ればなれになりますが、かんたは「らいおんみどり」やカエルのおひめさまのドレミに出会って、なんとかお城へ。カエルの小さなお城は「ごめんください、うたえみどりのおしろさま」と挨拶するとみるみる大きくなり、かんたを迎えます。そのお城は、かんたが庭につくったものとそっくり。現実とファンタジーを行ったりきたりしながら、自在に物語世界が広がっていくさまは爽快。ちょっとしたセリフが魔法のような力をもつところがすばらしいです。
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