子育ても、マンガも、めんどうくさいことだらけ

――妊娠出産を乗り越えても、わちゃわちゃと幼い子がいる生活は大変ですよね。

 子どもの人数に限らず、子育てって全部が全部めんどうじゃないですか(笑)。食べさせて、着替えさせて、風呂入れて、宿題やらせて……。毎日のすべてが、震えるほどめんどうくさい。

 そして、マンガを描くのもめんどうくさいんです。同じ顔を何度も何度も描きながら、1本40ページを全部「線」で埋めていく作業です。

 そのめんどうくささを超える体力というか、胆力みたいなものがないとマンガ家としてやっていけないし、親としてもやっていけないんだ、と悟りました。

 だからいつだって「この試合のスタートに立たせてもらっているんだから、めんどうくささには負けない!」と思いながら、仕事も子育てもやっています。

イライラしないために、心がけるのはユーモア

――末次さんが子どもを育てるなかで、心掛けていることはなんですか?

 そうですね……日々の細かな部分で、とくに大事なことってユーモアだな、と思うんです。

 子どもといると、イライラしたりムカッとすることって日々あって、それを真正面から受け止めて怒ってしまうと、家の空気がガクンと悪くなるんです。だから、「この状況の中でどうしたら面白がれるだろう」って常に考えています。

 たとえばお出かけのとき、子どもって身支度がなかなか終わらないですよね。「早くしなさい」「何やっているの?」ってつい怒っちゃって、子どもが泣く……ってよくあると思うんです。

 でも、せっかく楽しいことをするためのお出かけなのに、なんで最初から泣きっ面?って。

 だから、できるだけ「早く!」「まだ?」を言わないようにして、そのかわり家を出たら、かけっこすることにしたんです。「じゃあ行くよ! よーいドン!」って言うと、全員必ず走る(笑)。

 そうすると、みんなニコニコしているんですよね。ユーモアで気分を変えるってすごく大事だな、と思っています。

――お互いに気持ちよく暮らすためのコツですね。

 ムカつくことをおもしろがるって、マンガにも応用できるんです。

 私の性格なのか、どうしてもシリアスなシーンが増えがちなんですが、それだけだと読者は疲れてしまう。でもそこにユーモアを混ぜて描くことで、ふっと救われる展開になるんです。

 子育てで学んだことは、私のマンガにも影響を与えていると思います。

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(構成/神 素子)

『ちはやふる』作者で4児の母・末次由紀が語る“部活動の魅力” 「家庭以外の場所があるって、とても大切」
ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

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