井本 プロが言うこととは思えないんだよな。たとえば教員やりながら、子どもってこんなときにこんな一生懸命考えていたんだとか、感動することってあるじゃないですか。いままでも見ていたはずなのにぜんぜん気づけていなかったって気づくことがあります。その瞬間、僕の中の思い込みを一つポンって引っこ抜いてもらったような気分になります。そういう目で子どもを見てれば、子どもをいじろうなんて思わないと思うんですよね。

宮本 今年のうちの卒業生の一人は、小4の終わりまで週に一回のうちの教室だけ。ほかはスケジュール真っ白。毎日好きなことをやって、本を読むこと、調べることは大好きなんで、それがすべて学習になってました。模試を受けたらすごい成績をとるから、四教科必修の某大手塾の教室長と直談判して理社だけ受けさせてもらっていました。栄東の東大選抜をものすごくいい成績で合格。そのあとちょっとふぬけて、うちの授業で二番手の子にコテンパンにやられて、奮起して、開成、筑駒、合格。筑駒行きました。この子のパターンはいい受験でしたね。

親が信用していないと子どもは不安になる

おおた あえて相談者の代弁をすると、「いやいや、うちね、もうずっと待ってるんですけど、いっこうにやろうとしないんですけど……」という気持ちなんだと思うんです。

宮本 それを察知された時点でもう負けなんです。

おおた 「待ってる」と言いながら、「やってほしい、早くやってほしい……」という気配が体中の毛穴から溢れ出ているのを察知されているということですね。

宮本 信用してないから不安になります。親から心配されると、子どもは自分が信用されていないことに気づくから、嫌になります。しかも、親が先回りして心配していたら、子どもはずっと他人事だと思います。いつまでも自分のこととしてとらえない。

おおたとしまささん
子どもの“やる気”のスイッチは「親がさわるな!」 教育の専門家に聞く「わが子をコントロールしない」引き算の子育てとは
子どもが自ら考えだす 引き算の子育て

宮本 哲也,井本 陽久,おおたとしまさ

子どもが自ら考えだす 引き算の子育て
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おおたとしまさ
教育ジャーナリスト おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。リクルートでの雑誌編集を経て独立。数々の育児誌・教育誌の企画・編集に携わる。現在は、幼児教育から中学受験、思春期教育、ジェンダー教育、教育虐待、不登校、教育格差問題まで多岐にわたるテーマで現場取材および執筆活動を行っている。書籍のみならず、新聞から女性誌、各種ウェブメディアまでさまざまなメディアを舞台に、取材成果を発表し、テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。著書は『いま、ここで輝く。』(エッセンシャル出版)、『学校に染まるな!』(ちくまプリマー新書)など80冊以上。

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