宮本 この質問の前提に、勉強はつらいけれど我慢してやるもんだという思い込みがあるのかもしれないですね。その点、私のパズルには子どもは没頭するじゃないですか。「こんなに楽しそうにやっているのは勉強じゃない。○○式とか○○〇計算のほうが嫌がるから、そっちが本当の勉強だ!」って言われかねない。
おおた 「苦しくなければ勉強じゃない!」みたいな(笑)。だとすると、この相談者のお子さんがどこかで夢中でダンゴムシを集めていたとしても、それがこの親御さんの目には集中しているとかやる気を出してるというふうには映っていない可能性がありますね。「やる気スイッチ」って、これまた子どもをいじりたい大人が大好きなキーワードも出てきましたけど。
宮本 外から触るな! 考えてみてください。子どもを自由にコントロールできる機械ができたらほしいですか? 「起きろ」というレバーを押すと起きる。「ごはん食べろ」「おかわりしろ」「にんじんも食べろ」「歯を磨け」「行ってこい」「寄り道せずに帰ってこい」「これとこれをいついつまでに勉強しろ」「筑駒入れ!」。ぜんぶ叶う。勉強だけでも飽き足らなくなって、「野球部入れ」「エースになれ」「三振とれ」「甲子園で優勝しろ」って言って優勝する。「理Ⅲ(東大医学部)行け」「研究しろ」「ノーベル賞とれ〜」……。死ぬ間際にお母さんが「お母さん、楽しかったわ〜。もうこれからあなた自由に生きていいからね」ってコントローラーを渡され、どうしていいかわかんない。そのうちコントローラーを悪いやつに奪われて、「やきそばパン万引きしてこい」と言われて万引きする。鉄人28号と同じです。「敵にわたすな、大事なリモコン」。リモコン奪われたら、敵のロボットになっちゃう。同じじゃないですか! そんなリモコンほしいですかって考えてみればいい。
おおた そのリモコンの喩え、あらゆる悩みの答えになっちゃってる気がします(笑)。こういう相談に対して、「こうやったらやる気スイッチが入りますよ」みたいに子どもをコントロールする方法を良かれと思ってアドバイスしちゃう無責任な企画も巷には溢れています。まさに足し算の発想です。それに慣れちゃうと、「起きろ」から「ノーベル賞とれ〜」までぜんぶの過程で答えを聞きたくなっちゃって思考停止に陥ります。結局親自身がメディアに自分のリモコン渡してるって状態です。それでは親も子どもも不幸になります。それに対して、おふたりの場合は、自分が不安から逃れるために子どもをコントロールしたくなる欲求をどう手なずけるかという話になるのだと思います。
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