安浪:そうですね。本番当日の朝に親が「きれいな字で書きなさいよ」とか「ちゃんと時間配分を考えてね」と言っても、緊張している本人には右から左なんです。どこまでいっても、入試は子ども本人のものだから、周りからかけてほしい言葉は本人の中に答えがあると思うんです。私はいつも教え子に「当日はどんなことに気をつけたい?どんな受験にしたい?」とよく聞きます。そうすると、「力を出し切りたい」って言う子もいれば、「慌てずきれいな字で書きたい」と言う子もいる。それが当人の答えなんですよね。だから最後はそれを確認のために本人に言う。それしか言えないんですよ。
矢萩:そうやって本人に直接聞いてみるのはアリだと思います。直前期には「今してほしいことがある?」「何協力してほしい?」と本人に聞いてみる。そうしていくうちに、本人の希望が結構わかってきますから。成長期は、常に「今」が一番成長している、という状態です。だから親から見たら何も考えていないようでも、子ども自身は本人なりに自覚が出てきていいて、周りに対してもこうしてくれたらいいのに、ということがあるはずなんです。それをちゃんと聞き出して、わかった、それを協力してあげるねっていうスタンスが一番いいかなとは思います。
ネガティブな表現になりそうならぐっとこらえて
おおた:親御さんも不安になることは多いと思うんですが、不安の感情から動くことってあんまりいい方向にいくことはないです。同様に不安からネガティブなことを言うのも、よくなることってあんまりない。特にこの時期になったら、子どもの行動が不安になって、何かちょっと促してあげなきゃいけない、という気持ちも湧いてくるかもしれないけれど、それがもしネガティブな表現になりそうなら、それはぐっとこらえたほうがいいだろうなとは思います。
安浪:あと、親の心構えとしては、もう体力が全て、ということです。だからちゃんと寝かせてしっかり睡眠を取らせてください。それでも風邪を引くときは引くんです。そうなったらどうしよう、と不安になっている子に私がよく言うのは「試験数日前に熱が出たり、前日に緊張して全然眠れなかった、という子でもちゃんと合格しているから大丈夫だよ」と。親御さんもそれぐらいの気持ちでいてください。もちろん、親御さん自身もしっかり睡眠は取ってくださいね。
おおた:そうそう。親御さんたちはこれからパニックになって難しいことも考えられなくなっていくでしょうから、まずはしっかり寝る。これをしっかり守るぐらいでいいんじゃないかなって気がします。
(構成/教育エディター・江口祐子)
おおたとしまさ