ささいなことがきっかけで、今日も始まったきょうだいげんか。取っ組み合いやののしり合いを前に、思わずため息……。きょうだいの子どもをもつ家庭に、このような光景は多いのではないでしょうか。仲裁のタイミングや勝敗のジャッジも、毎回悩ましいところです。子どものきょうだいげんかとどう向き合うべきか、大阪教育大学教育学部教授で自身も3人の男子の子育てを経験した小崎恭弘さんに話を聞きました。
【図】上の子、下の子、ひとりっ子…きょうだいのポジション別向き合いポイントはこちら(全4枚)そもそも、きょうだいは生活を共にする「ライバル」的存在なのです
――年齢もちがうのに、なぜきょうだいはすぐけんかに発展するのでしょうか。
きょうだいげんかについてお話しする前に、18歳未満の児童がいる世帯数の現状をお伝えします。
厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」(2023年)を見ると、2023年6月1日現在の全国の総世帯数は5445万2千世帯です。そのうち、18歳未満の児童がいる世帯が全体の18.1%。ちなみに、10年前の2013年は24.3%でした。さらに、ふたり以上の「きょうだい」がいる世帯がどんどん減っています。2023年には、ひとりっ子のほうが、ふたり以上のきょうだいっ子より多くなりました(ひとり8.84%、ふたり7.2%、三人以上2.1%)。このように、驚くほどきょうだいっ子が減っている現実があります。
子どもをもつということの意味や価値感がいろいろと変化して、今は複数の「きょうだい」をもつことが難しい社会になってきています。そんな中で、きょうだいがいるということは、やはり素晴らしいということ。でも、きょうだいが「いなくてはいけない」ということでは決してないということ。これを前提にお話しさせてください。
なぜきょうだいげんかは起こりやすいのか。
きょうだいは「親」という唯一無二の存在の愛情を奪い合うライバルだからです。相手と親との関係に対して、羨望や嫉妬を如実に感じる間柄。ですから、けんかに発展しやすいのです。
親御さんは、わが子たちが本気でけんかする姿を見るのはつらいものです。でも、けんかや人とのトラブルというのは、なにかしらのトレーニングや経験値の積み重ねでもあります。これを通して「ここまでは大丈夫、これ以上はだめなんだ」という人との距離感をつかんでいくんですね。
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