「中学受験に役立つのはこういう本だ」と無理に読ませても国語力はつかない

茂山  小学生って、じつは大人よりも本を読んでいますよね。図書の時間、朝読書の時間に加え、その是非は別として「読書感想文」も夏休みの宿題の定番です。ただ、本人の語彙レベルが達していないにもかかわらず、ワンランク上の本を読ませることがいいことだとは思いませんし、「中学受験に役立つのはこういう本だ」と決めつけ無理に読ませたところで「国語の力」がつくわけでもない。語彙レベルに合ったものを読む、という経験を積み重ねていかない限り、次には進めないと思うんです。

 たとえばファンタジーが好きならファンタジーを読み、物語の世界に入っていく。大人は没入感こそが読書の醍醐味である、とわかっていますが、子どもたちは好きな本を通して彼らなりに「作者と対話をする」という経験を積み重ねていくのだと思います。

山﨑 「大人より小学生のほうが本を読んでいる」という言葉を聞いて、耳が痛いと感じる人も多いかもしれません。僕は子どもの頃から本の虫で、今日も鞄に本が一冊入っていますが、「読者の皆さん、常に鞄に本が入っていますか?」と尋ねたとして、どれだけの人がイエスと答えられるだろう、と考えることはあります。

 一方、子どもたちは好きな本を読もうとしている時点で、まず文字嫌いにはならないですよね。

茂山 そう、それだけで十分価値がある。

山﨑 電車が好きなら電車についての解説本を、たとえそれが難しく感じられるものであったとしても「読んでみたい」と思うでしょう。先日、小学3年の電車好きの生徒に、ルビが振られていない山手線についての本を貸したら、自ら感想文まで書いてくれました。戦国武将が好きな子なら、戦国武将についての解説本を貪るように読むと思います。息をするように本を読めるようになったら強いのは言うまでもないですが、その前段階として、文字に拒否反応を示すことがないよう、好きな本をとことん読ませてあげる必要もあると思います。

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