額面上の言葉をそのまま受け取らない

矢萩:古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスは、「若者はシラフで酔っ払っているようなものだ」と言いました。また、心理学者のフロイトの娘で、学者のアンナ・フロイトは、「青年期にまともであること自体がまともではない」と言っています。つまり、昔から大人と子どもの間にいる若者についてみな苦労していたのです。もっと詳しくいうと、体は大人と同じように大きくなっているのに、前頭前野が成長しきっていないので、合理的な判断ができない、見た目との行動のギャップが大きい期間を思春期、と言っているわけです。そもそも思春期とはそういう時期なんだというふうに理解しておかないと、お互い熱くなりすぎたり、決定的に関係が悪くなったりしてしまいます。彼らの言動を文字通りに真に受けて、力ずくで何とかしようとするのではなく、今はああ言ってはいるけど強がっているだけだな、とか、本当は分かっているはずだ、と信じてあげることも、たとえ聞いてないふうでもそれを言葉にして伝えることも重要です。

安浪京子さん

安浪:確かに「思春期はどういうものか」を知っておくのはとても大事ですね。現実問題としては子どもの言い方に腹が立つこともあると思います。でもそれを直接言ってしまったり、真正面から押し込もうとしたりすると喧嘩になっちゃうんですよね。もしくは、親がいろいろ言いたいことがあるのに、向こうは口を聞いてくれない、ということもあるかもしれない。でも、私もそういうときあったかもしれないな、と自分を振り返って、一番身近な理解者になってあげたらいいんじゃないかな、と思います。

おおた:そうですね。お子さんの額面上の言葉をそのまま受け取るのではなく、先ほど言った独立と依存の関係を考えて、「どういう気持ちが今これを言わせているのかしら」と、言葉の裏側にあるお子さんの心理を少しだけ考えてみるだけでだいぶ心は落ち着くんじゃないかと。そして、今はちょっと離れたい時期なのかな、とか今は甘えたいんだろうな、とか感じ取ってあげることができれば大きく間違えることはないと思います。

おおたとしまささん
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