「骨端線」が折れていると、骨の成長が止まることも
――救急車を呼ぶかどうかは、どう判断したらいいのですか?
私は以前、救急医療に従事していましたが、子どもの骨折で救急搬送されてくるケースはそれほど多くありません。よくあるのは、スポーツ中や遊んでいるときに骨折し、なんとか家に帰ったけれど夜になっても痛みが続く。翌朝、腫れているので病院を受診して「骨折」と診断されるケースです。やはり痛みが続く場合は、翌日にでも医療機関でエックス線を撮ってもらったほうがいいと思います。万が一、骨の両端にある「骨端線」が折れていると、骨の成長が止まってしまう恐れがあるからです。
交通事故などの外傷での負傷や、開放骨折と呼ばれる骨が見えている状態などは一刻も早い処置が必要となりますので、すぐに救急車を呼んでください。骨折だけでなく傷口からの感染、脳や内臓への影響なども心配です。
――骨折したらどう治療するのでしょうか。
骨折の部位と程度によりますが、子どもの骨折は「保存療法」と「手術療法」の二択です。保存療法はギプスで固定して、自然治癒を待つ方法です。ただ、子どもが動くと折れた骨がずれてしまうことがあるので、そうした場合は手術になります。手術も大きく分けて二つの選択肢にわかれます。先ほどお話しした「若木骨折」であれば骨はあまりずれていないので、皮膚の上からピンを刺して骨を固定する「経皮的ピンニング」という方法がよく行われます。比較的簡単な手術で、ギプスを巻いてその日のうちに帰宅できることもあります。
重度の骨折の場合は、皮膚を開いて金属製のプレートで骨を固定する手術を行います。入院が必要で、退院したあともしばらくは定期的に医師の診察を受けます。「偽関節」といって骨がうまく固まらず、曲がった状態で固定してしまうと骨の成長に大きく影響するからです。こうしたフォローアップが必要なのが、成長期の骨折の特徴とも言えます。
(取材・文/越膳綾子)
出典)
※1 ニッセイ基礎研究所 基礎研レター
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/62925_ext_18_0.pdf?site=nli
※2 学校等の管理下の災害 [令和5年版]
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/kankobutuichiran/tabid/3037/Default.aspx