――それで料理研究家を目指すことに?

 母(注:料理家、李映林さん)のアシスタントをしていたころ、撮影でお世話になっていた雑誌『オレンジページ』の担当の編集さんから、料理連載のオファーをいただいたことがきっかけです。今思い返してみても、信じられないくらいの大抜擢で、本当に感謝しています。

――料理の道は、自然に開けていったのですね。

 それまで僕は、自分の意思や希望を通すことに必要以上に固執していました。でも、そうすればするほど、失敗を重ねることになったのです。 

 それが、考え方を変えて、人からいただいたアドバイスを真摯に受け止めて、それを素直に実行するようになってからは道が開けて、人生がまるで変わりました。

次女がまだ小さいころ。長女と一緒に料理を楽しむ姿も(写真提供)

――お子さんたちにどんなふうに育ってほしいですか。

 道を自分自身で切り開くことができる人と、そうではない人。一般的には前者のほうが優れた生き方とされるかもしれませんが、僕の場合は違いました。ある意味、受け身的な生き方ですから。でもやっぱり適性は人それぞれなんだと感じています。

 なので、僕が子どもたちや、若い世代に助言できることなんてあまりないと思っています。今の子どもたちは、生まれながらにインターネットがあるデジタル世代。彼らが、大きくなったときの社会がどんなものか、僕には想像なんてまったくつかないですし。僕にできることは、子どもたちを信じて、ただ見守って応援することだけなのかな、と。

――料理も掃除も洗濯もできるお父さんの姿は素敵です。

 いやいや、そんなことないです。だけど、僕はちょっとやりすぎなところもあるらしくて。毎日夜ごはんを作り終えると、へとへとになってしまいます……。

 妻は、「そこまで完璧に頑張らなくていいんじゃない?」「時には、子どもたちに役割としてやらせてあげることも大事だよ」って言ってくれるし、そうだな、とも思うのですが……。

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