不登校の原因、「いじめ」は最下位?

――従来の学校での学び方やあり方自体が、合っていない子もいるということですね。不安や抑うつの原因として、学校での「いじめ」は考えられますか?

 実は、先ほどの文科省の調査でも不登校の原因で「いじめ」は最下位なんです。実際、いじめの被害情報や相談の報告は、小中学生あわせて全体の1.3%(100人に1人程度)にすぎないという結果が出ています。

 しかし、実際には、いじめを受けていると感じて苦しんでいる子たちはたくさんいることが明らかになっています。文科省調査によると、昨年度のいじめ認知件数(小中高・特別支援学校あわせた合計)は、過去最多の約73万件で、前年度より約5万件の増加です。

――いじめで苦しんでいる子はまだまだ多いのですね。

「いじめ」も一つのマッチング・トラブルといえる部分があります。もちろん、いじめられている子にも原因があるなどとはまったく思いません。ただし、いじめる子といじめられる子双方の人間関係がマッチしていないのも事実です。どうしても相性が悪い相手はいるわけで、その子がずっと近くの席にいると、やはりいじめなどの原因にもなりえます。それを放置しておくと、結果、不登校の原因になってしまうこともあります。

――わが子が不登校になった場合、親はどうサポートできるでしょうか。

 今の小中学校では、やはり「みんなと仲良く・一緒に」が良いとされていますが、中には、そもそも個人の特性上、集団生活が合わないというお子さんもいます。しかし、みんなと同じ場所で同じペースで勉強するのが苦手なだけで、学びに対しては意欲的な子はたくさんいるんです。 

「適応障害」という言葉もありますが、適応できない場所に無理に適応させようと子どもを変えるのではうまくいきません。学校以外の場所で、生き生きと学んだり、友達と仲良くできたりするケースもあります。その子が自然に適応できる場所、環境を見つけてあげることが、一番自然で伸びやかな生活、学びができるようになる第一歩だと思いますね。

(取材・文/玉居子泰子)

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石井 志昂

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石井しこう
石井しこう

1982 年東京生まれ。不登校ジャーナリスト。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校に。同年、フリースクールへ入会。19歳からはNPO 法人で、不登校の子どもや若者、親など400 名以上に取材を行なうほか、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャルの識者にも不登校をテーマに取材を重ねてきた。現在はNPO を退社し不登校ジャーナリストとして講演や取材、「不登校生動画甲子園」の開催などイベント運営などでも活動中。「Yahoo!ニュース 個人」月間MVA を二度受賞。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)、『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)などがある。

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