新1年生に無償配布する自治体も

 家計の負担への配慮から、ランドセルや通学用リュックを無償で配布する自治体もあります。

 茨城県日立市では、1975(昭和50)年度から、市オリジナルの薄型ランドセルを新1年生に配布。合成皮革で、6年間の保証がついているため、壊れてしまった場合でも無償で修理を受けられるそう。

「日立市オリジナルランドセル」は930g。2025年度からジェンダーフリーを意識して色をキャメルに変更。防犯を考慮して名札は内側につけた。

 富山県立山町は2023年春から、アウトドア用品メーカー「モンベル」(本社:大阪市)に製作を委託し、通学用のバックパック「わんパック」を新1年生に贈呈しています。わんパックはナイロン製で930g。山形県村山市と長野県駒ケ根市も続きました。

山形県村山市で、モンベルの開発した「わんパック」を背負う子どもたち=村山市提供

 各地域に浸透している通学かばんの使用は、強制ではありません。前出の「ナップランド」を小樽市で制作する「バッグのムラタ」の担当者によると、「成長して高学年になるとランドセルを選ぶお子さまもいます」と話します。山形県村山市が昨年、使用状況を調査したところ、対象児童数122人のうち、贈呈ランドセル「わんパック」の使用児童数は79人で、使用率65%という結果でした。やはり「ランドセル人気」は根強いのでしょうか。

 白土教授は、「かつて全国の児童養護施設にランドセルの寄付が広まった“タイガーマスク運動”に象徴されるように、ランドセルは日本の伝統文化。ランドセルがなくなることはない」と考えています。

「桜が舞う中、入学式でランドセルを背負った我が子の写真を撮りたいという親御さんや、孫にランドセルを贈ってあげたいという祖父母は多いでしょう。『小学生になったらランドセルを背負いたい!』と子ども自身の憧れもあります」

 一方で、選択肢が増えてきたことを「喜ばしい変化」と語ります。

「安価で丈夫な布製のリュックサックも市民権を得て、一人ひとりが個性にあったかばんを背負える時代になりました。ランドセルには、『親の期待、学校の期待、国の期待が詰まっている』なんて言われますが、それぞれの家庭がお子さんにとって最善の選択肢を選んでいけばいいのではないでしょうか」

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中村茉莉花
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