大半の子が小学校に上がるまでに発症する中耳炎。鼓膜の奥にある中耳が炎症を起こした状態で、繰り返し発症したり、長引いたりするケースもあります。なぜ子どもは中耳炎にかかりやすいのでしょうか。また、予防する方法はあるのでしょうか。国立成育医療研究センターで小児の耳鼻咽喉科を担当する守本倫子医師に聞きました。
【図版】自宅で耳掃除するときの4つのポイントはこちら鼻すすりの癖があると中耳炎になりやすい
――なぜ子どもは中耳炎にかかりやすいのですか?
中耳炎にはいくつかの種類がありますが、最も多いのが急性中耳炎です。鼻の細菌やウイルスが鼻の奥から「耳管」という場所を通って、中耳に入り炎症を引き起こした状態です。たいていは中耳炎を発症する前に鼻水の症状があります。子どもは大人に比べて耳管が短くて太く、さらに角度が水平に近いため、鼻水をすすったときなどに細菌やウイルスが中耳まで入りやすいのです。
それに加えて子どもは鼻をうまくかめずに、鼻水をすすってしまう傾向があります。鼻をすする癖がある人とそうではない人を比較した研究では、鼻をすする癖がある人のほうが、中耳炎になりやすかったという報告があります。
――急性中耳炎はどのような症状がありますか?
代表的なのが耳の痛み、耳だれ、発熱の三つです。中耳が炎症を起こすと鼓膜が腫れてうみがたまり、さらに粘膜が腫れあがるとふくらんで風船のようになり、やがて破れます。破れた瞬間は非常に痛いです。こうした場合は鼓膜切開をしてうみを出します。抗菌薬だけで治ることもありますが、炎症がひどいと効き目がなく、うみがたまると細菌やウイルスが脳に入り、「髄膜炎」や「硬膜外膿瘍」を引き起こすこともあるのです。
耳の後ろにある突出した骨「乳様突起(にゅうようとっき)」が炎症を起こしたり、中耳のさらに奥にある内耳にまで炎症が及んで、めまいや顔面神経麻痺、難聴を引き起こしたりすることもあります。こうした中耳炎による合併症を引き起こさないためにも、鼓膜切開が必要なのです。
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