「耳掃除のやりすぎはよくない」「そもそも耳垢(あか)はとる必要がない」といった話を耳にしたことがある人は、多いのではないでしょうか。とはいえ、耳垢が気になったり、耳掃除のために耳鼻科に通うのは面倒に感じたりするものです。子どもの耳垢を適切に処理するやり方について、国立成育医療研究センターで小児の耳鼻咽喉科を担当する守本倫子医師に聞きました。
【図版】自宅で耳掃除するときの4つのポイントはこちら耳掃除の適正頻度は月1回
――耳掃除のやりすぎはよくないと言われています。どの程度やればいいですか?
耳の内側を指で触ると、耳かすのようなものがとれることがあります。これは耳垢が外に出てきたもので、自然な現象です。つまり、耳垢は耳の奥まで綿棒を入れて掃除をしなくても、自然と外に出てくるのです。家での耳掃除の目的は、外に出てきた耳垢をとり除くこと。耳の中に綿棒を入れたとしても、穴の入り口あたりにある耳垢をかき出すくらいで、奥まで掃除する必要はありません。耳掃除の頻度は月に1回程度で十分です。
――なぜ耳掃除をやりすぎるといけないのですか?
外耳道(耳の穴から鼓膜までの部位)は皮膚が薄いうえ、さらに子どもの皮膚の厚さは乳幼児の場合、大人の3分の1程度と言われています。その部分を綿棒でゴシゴシこすると、たわしで掃除しているようなもので、皮膚が傷ついてしまいます。そこから雑菌が入ると、炎症を起こしてかゆみや痛みが出てくることがあるのです。
また、耳の奥まで綿棒を入れると、耳垢を奥に押し込んでしまうことになります。それを繰り返していると地層のように耳垢が重なっていき、圧縮されて硬くなります。その塊が外耳道を傷つけ、炎症を起こして黄色い浸出液が出てくることもあります。するとさらに硬くなるという悪循環を起こし、ひどい場合には、石のような硬さになることもあるのです。当然聞こえづらくなり、痛みも出てきます。耳鼻科でとるときにも痛く、出血することもあります。
――耳垢が石のようになるまで気づかないものでしょうか。
そうですね。学校の健診ではプールの授業が始まる前に耳垢をチェックして、たまっている場合は耳鼻科の受診を促されます。これは、耳の中に水が入ると硬くなっている耳垢がふやけてふくらみ、一気に聞こえなくなってしまうからなのです。健診で指摘されるまで、耳垢がたまって硬くなっていることには、なかなか気づかないものです。
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