取材中も、テンポの速いトークのなかに、ダジャレやアメリカンジョークがぽんぽん飛び出す。来日して40年。入れ替わりの激しいテレビ業界で、流暢な日本語を武器に外国人コメンテーターとして第一線で活躍し続けるデーブ・スペクターさん。日本文化に夢中になった少年時代や、語学学習法について話を聞きました。「AERA English特別号 英語に強くなる小学校選び 2025」(朝日新聞出版)からご紹介します。
【写真】デーブさんが初めて日本語で書いた「ラブレター」ほか貴重写真はこちら(全3枚)英語は人生を「脱線」させてしまう
「英語なんて勉強しないほうが、平和に生きていけるかもしれないね」
ぎょっとするようなことを、突然口にする。
「だって英語での情報量は日本語とケタ違いだから、英語を勉強したら、世界がどんどん広がってしまう。問題意識がめばえて、日本に満足できなくなる。果ては海外に留学して外国人と結婚しちゃうかもしれない。英語は人生を『脱線』させちゃうんです」
ジョークとも本気ともつかぬ得意の「デーブ節」だが、語学との出合いは「世界を広げ、人生を変えてしまう」という。かくいうデーブさんも、日本語と出合い「人生を脱線させられた」一人だ。
日本語のラブレター 出だしは「もしもし」
生粋のシカゴ育ちだが、あまりの日本語の流暢さに「埼玉県出身」の噂が飛び交ったこともある。日本語を学び始めたのは小学5年のとき。日本からの転校生、ワタルくんとの出会いがきっかけだった。ワタルくんを驚かせようと独学を始め、すぐに日本語のとりこになった。
「毎日最低10個は単語をノートに書き、覚えるようにしていました。読み終えた日本の漫画雑誌をワタルくんにもらい、夢中で読みましたね」
井上靖や三島由紀夫、北杜夫の小説も乱読し、シカゴの日系人会が主催する弁論大会では、日本人生徒を差し置き、2年連続優勝を果たす。
ワタルくんのお姉さんに宛て、ラブレターも書いた。電話でしか使わないあいさつとは知らず、出だしは「もしもし」。覚えたての漢字を駆使して日本の映画や雑誌の話題を盛り込み、「オバQ」や「おそ松くん」のイラストも添えた。
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